ゲームやスマホが子どもの脳の知能発達に与える影響

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2016年2月号

ゲームスマホは、子どものの知能発達にどのような影響を与えるのでしょうか。

東北大学未来科学技術共同研究センターの川島隆太教授といえば、ゲームソフト「脳トレ」で有名です。その川島教授らの研究チームが、ビデオゲーム(スマホのゲーム、DS3などの携帯ゲーム、Wiiなどのテレビゲーム、パソコンのゲームなど)に関するこんな研究結果を発表なさいました。

ゲームやスマホが子どもの脳の発達に及ぼす悪影響

研究チームは、子どもたちの脳の発達状態、そして、それに関連した知能発達の状態を、数年にわたって追跡調査しました。そして、「長時間ビデオゲームで遊ぶ習慣を持つ子どもたちの場合、そうでない子どもたちに比べて脳の発達が阻害され、いわば『スカスカのスイカ』のような状態になっていく」ことが明らかになったのです。具体的には、脳の中の前頭前皮質・海馬・基底核といった、「認知機能」を司る部分の発達阻害です。

認知機能というのは、たとえば次のような力のことです。

  • 目や耳などから入ってきた情報が何なのか、すでに持っている知識と照らし合わせて判断する。
  • 見えない物や未来を想像する。
  • 論理的に考える。
  • 何をすべきか決断する。
  • 記憶したり、それを思い出したりする。
  • 言葉を使ってコミュニケーションを取る。

すなわち「知能」と同じような意味だと思っていいでしょう。

そして実際の知能検査でも、長時間のゲーム習慣によってこれらの知的能力の発達が遅れてしまうことが確かめられました。

詳しくは、東北大学によるプレリリースをご覧ください。

ゲームの中毒性

これまでの研究でも、ビデオゲームをプレイしているときは、快感をもたらす神経伝達物質(ドーパミンなど)がたくさん放出されることが確認されています。これは、ゲームのやり過ぎはアルコール依存や薬物依存などと同様、依存症につながる恐れがあることを示しています。

幼児から中学生までの発達期にビデオゲームを長時間行なう習慣を付けてしまうと、それが依存症化してしまい、本来勉強をしたり友だちと遊んだり家族と過ごしたりしなければならない場面でも、ゲームをやめられなくなる恐れが高いということです。

そうなると当然、学校の成績や人間関係にも影響を与えるでしょう。また知能、感情のコントロール、社会性などに問題を抱えたまま成長することになります。将来的には働けない、引きこもる、暴れるなど、社会的自立にも重大な悪影響を及ぼしかねません。

スマホと学力の関係

ビデオゲームだけでなく、子どものスマホ依存も問題になっています。2014年に文部科学省が小中学生を対象に行なった全国調査(全国学力テスト時に行なったアンケート調査)でも、スマートフォンや携帯電話の利用時間と成績には、負の相関関係があることが明らかになりました。

すなわち、ゲーム時間が長くなると成績が下がるということです。

例として、中学生が受けた数学Bの場合を紹介します。スマホ・携帯電話のゲーム以外(メールやSNSなど)の利用時間が1日4時間以上使っている生徒は、30分以下の生徒より正答率が18.6ポイントも低いことが分かりました。

中学生の国語でも、小学生の算数・国語でも、これと同程度の差が見られます。

詳しい調査結果は、国立教育政策研究所の資料をご参照ください。

ゲームやスマホ利用に関する保護者の責任

どうしてお子さんにスマホやゲーム機を与えて、やりたい放題やらせるのでしょう。親御さんたちに尋ねると、

スマホやゲーム機を与えておくと、静かにしているから楽なのよね

やらせろとうるさいからから、つい与えてしまって

そんな声が聞かれます。

気持ちは分かります。が、「今、楽かどうか」だけでなく、「将来、大変にならないかどうか」を考えてみてください。そして、将来のお子さんの幸せのために、今何を身につけさせなければならないかを考えてみてください。

学校でもスマホやゲームの利用については指導していますが、ゲームやスマホを使うのは家庭がほとんどです。ですから、小さいときからゲームやスマホの利用時間をしっかりとコントロールする責任は、保護者にあると思ってください。厳しい言い方ですが、本当にそうなのです。

別の調査では、スマホを持っているだけで、持っていない子よりも中間テスト・期末テストの結果が十数%も低いという結果が出ています。持っているだけで利用しないなんてことはあり得ませんからね。そして一度持たせると、コントロールできずに長時間使ってしまう子が多いということです。

ですから、そもそも小中学生にスマホを持たせる意味が本当にあるのかどうか、そこから考えてみましょう。

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