感謝はやる気を引き出す

スクールソーシャルワーカーだより スクールソーシャルワーカーだより

2016年4月号

感謝。それこそ子どものやる気を引き出すための鍵。今回はそんなお話です。

やる気がないならやめなさい

「いつやるの? 今でしょ!」で有名な予備校講師、林修先生が、テレビ番組(TBSテレビ「林先生が驚く初耳学!」)の中で「教え子のやる気を引き出すために、どんなことをしているか」と質問されて、こんなことをおっしゃっていました。

やる気がないならやめなさい、と言います。
勉強するということは贅沢なことなんだから。親が生活の面倒を見てくれて、学校に行かせてくれて、高い授業料も払ってもらえる恵まれた環境にいる。
それなのにやる気が出ない。
自分がいかに恵まれているかということが分からないような人間なら、勉強したって意味がない。

もちろん、林先生は義務教育ではない予備校の講師だからこそ「嫌ならやめろ」と言えますが、公立小中学校の先生や保護者が同じことを言うことはできません。私が注目したポイントはそこではなく、自分は恵まれているのだと気づいていることが、いわゆるやる気スイッチなのだと、林先生は考えておられるということです。

気づき→感謝→決意→やる気

自分が恵まれた環境にいることに気づいたら、当然、その恵みを与えてくださっている存在(親だったり、教師だったり、地域の人たちだったり、行政の人たちだったり、神仏だったり)に対しての感謝が生まれます。そして、感謝は「自分が恵みを受けるのにふさわしい人間になりたい」「その人たちの期待に応えたい」という決意を生み、それがやる気を生み出します。

感謝の反対は?

日本語の感謝を表す言葉、「ありがとう」は「有り難し」から来ています。すなわち、あり得ないようなことをしていただいたという感動の言葉です。

ということは、感謝の反対語は「当たり前」だと言えます。親子関係でも、夫婦関係でも、友人関係でも、師弟関係でも、そのほかの人間関係でも、していただいたことを「当たり前」と思っていたら、感謝は生まれません。

私たちは、親として、教育者として、子どもたちの中に「自分がいかに恵まれた環境にいるのかということに気づき、感謝できる心」を育てていかなければなりません。感謝を忘れた子どもは、やる気を失い、勉強だけでなく、部活動でも、人間関係でも、道徳性・社会性においても、向上することをやめてしまいます。

感謝を生み出す教育

ただ、子どもたちに「これだけしてやっているんだから感謝しろ」とはなかなか言いづらいですし、たとえ言ったとしても効果があるかどうかは疑問です。そこで、代わりに良い方法を2つ紹介します。

モデリング

周りの大人が望ましい行動をしてみせること、「すなわち背中で教える」ことをモデリングと言います。まず私たちが、ほんの小さな出来事や親切にも、「ありがとう」を言い、「ありがたいなぁ」と感動してみせるのです。その際、何かすごいことをしてくれたときだけでなく、お茶を入れてくれた、食器を流しまで持ってきてくれた、今日も仕事に行って帰ってきてくれた、買い物につきあってくれたなど、ほんの些細なことに感謝を表すことがコツです。そうでないと、子どもたちはしてもらったことを「当たり前だ」と思うようになるでしょう。

家事の分担

もう一つは、お子さんに(たとえ幼稚園生であっても、受験生であっても)に、家事を分担させることです。一方的にしてもらうだけだと、かえって感謝の心は育ちません。自分が他の人のために何かをし、感謝されることを通して、人は感謝を学んでいきます。新聞を取ってくるでも、洗った食器を拭くでも、何でもいいですから、お子さんに「自分は家族の一員として家族を支えている」という体験をさせたいものです。

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