2009年6月号
今回は「夢の学力テスト」の話をします。
こういう子どもに育って欲しい。親ならば、誰しも子どもに対して理想を抱いていることでしょう。しかし、このような子になれと言うだけでは、なかなかその思いが伝わらず、かえって反発を招くこともあります。そして、そのためにもどかしい思いをなさることが多いかもしれません。
押しつけでないやり方で「こうなって欲しい」という姿をお子さんに伝えるためにはどうしたらいいのでしょうか。
夢の学力テスト
ある小学校に、教育心理学の学者が訪ねてきました。そして、新しい学力テストができたので、子どもたちにモニターになってもらいたいと依頼しました。学者によると、このテストは、半年先のその子の学力が予言できるというものです。そこで、あるクラスが選ばれて、子どもたちにそのテストを受けてもらうことになりました。
テストの結果が出て、それを担任の先生に伝える際、学者はひとつのお願いをしました。それは、結果については決して子どもたちに公表しないということです。公表することで、子どもたちのやる気に影響が出ることを防止するためです。「半年後に必ず成績が下がる」などと言われたら、やる気をなくしてしまい、その結果成績が下がるかもしれませんからね。それでは、テストが本当に半年後の学力を予言したかどうか分かりません。
学者は、5人の子どもの名前を挙げました。そして、担任の先生に、「この子たちの成績は、半年後に爆発的に伸びます」と言いました。挙げられた5人の子どもたちは、元々成績が上位の子もいれば、下位の子もいました。しかし、いずれも、その後成績が爆発的に伸びたのです。いやぁ、すごいテストができたものですね。
無意識へのメッセージ
しかし、実はこのテスト、新しく開発されたものではありません。その辺の書店さんでも手に入る、普通のテストだったのです。しかも、必ず学力が上がると予言された5人というのは、テストの結果で選ばれたのではなく、サイコロを振って適当に選ばれた子どもたちでした。
それなのに、なぜ5人は成績が爆発的に伸びたのでしょうか。犯人(?)は担任の先生です。偉い学者先生に「この子たちは伸びる」と言われたものだから、それを心から信じてしまったのです。 もちろん、結果は言ってはいけないと釘を刺されていますから、「あなたたちは成績が上がる」とは言えませんが、きっと見つめるまなざしが違ったことでしょう。そして、無意識のうちに「あなたたちは伸びる子だ」というメッセージが伝わったのでしょう。
すると、その子たちの無意識も「私は伸びる子だ」と信じます。「自分はこういう存在だ」と信じると、実際にそうなるように、無意識があの手この手で助けてくれるようになります。その結果、勉強も楽しんでやれるようになり、成績も伸びていったのだと考えられます。
つまり、彼らは、元々伸びる可能性を持っていました。それが、信じてもらうことで引き出されたということです。可能性がなければ伸びませんから。そして、その5人以外の子たちも、周りの大人たちが「この子は伸びる」と心から信じてあげさえすれば、同じように成績が伸びたはずです。
あなたのお子さんは?
では、あなたのお子さんは、どんなお子さんですか? これからどうなって欲しいかではなく、「今」どんなお子さんですか? 「もっときびきび行動して欲しい」というのは、「今はグズだ」と思っているということですね。そして、「この子はグズだ」と思っていたら、ますますそうなります。無意識に「お前はグズだ。いいか、グズなんだぞ。決して機敏になんか動けないぞ」と洗脳しているようなものだからです。
アインシュタインもノーベルも、発達上の課題を抱えていて、学校でも不適応だったようです。でも、彼らの親たちは「この子は天才だ」と、その可能性を信じ続けました。
この子は優しい子、この子はお手伝いが大好きな子、この子は元気な子、この子は伸びる子……。まずは周りの大人がそう信じることから始めたいですね。そして、その信念は真実です。だから、可能性が呼び出されて、ますますそうなっていくのです。
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