感情のコントロール

スクールソーシャルワーカーだより スクールソーシャルワーカーだより

2011年10月号

今月から感情のコントロールについて書かせていただきます。

問題を乗り越えるための感情のコントロール力

我が子には平穏無事な人生を送ってもらいたい。多くの親がそう思うでしょう、しかし、現実にはそうはいきません。生きている以上、問題に巻き込まれたり、誰かとトラブルになったり、壁にぶつかったり、希望していたことがかなわなかったり、競争に負けたり……そういう残念な状況をまったく味わわないで過ごすことはできません。

ならば、子どもたちが上手にその問題を乗り越えられる力を育ててやりたいと思いませんか? そして、もしかしたらあなた自身がそうありたいと願っておられるかもしれません。そのために必要な力の一つが、感情のコントロール力です。

問題にぶつかって、悲しんだり、怒りを感じたり、がっかりしたりするのは自然なことです。しかし、その感情に巻き込まれて、悲しみのあまり身動きがとれなくなったり、怒りにまかせて暴力的になって人間関係を破壊したり、絶望のあまり自暴自棄になってしまったりしたのでは、せっかく持っている問題を乗り越える力をうまく使うことができません。

感情を生み出すのは出来事ではない

では、感情のコントロール力を身につけるためにはどうしたらいいのでしょうか。まず「感情を生み出すのは出来事ではない」ということを意識しましょう。

私たちは、怒りや悲しみや失望などの嫌な気持ちになったとき、よく「あの人があんなことをしたからだ(あるいは、してくれなかったからだ)」とか「こんなことが起こったからだ」と言います。しかし、それは間違いです。なぜなら、同じ問題にぶつかっても、人によって違う感情を抱き、違う反応をするからです。

たとえば、子どもから「うるさい!」と強い調子で言われたとします。ある親は怒って逆ギレします。ある親は悲しくなって泣いてしまいます。ある親は罪責感でいっぱいになります。ある親は怖くなってまともに子どもの顔が見られなくなります。ある親は冷静に対応します。

感情を生み出すのは、周りの人の言動や状況(すなわち起こった「出来事」)ではありません。出来事をどう解釈するか、どう意味づけるか、すなわち自分の「考え」です。

子どもの「うるさい!」という言葉を聞いて、

  • 「目下の者に馬鹿にされた」と考えれば腹が立つでしょう。
  • 「愛する子どもに嫌われた」と考えれば悲しくなるでしょう。
  • 「子どもを怒らせるなんて、自分はなんてひどい親だろう」と考えれば罪責感を味わうでしょう。
  • 「殺されるかもしれない」と考えれば怖くなるのは当然ですね。
  • 「この子は自分で問題を解決したいと思うほど成長したんだな」と考えれば、うれしくなるでしょう。

ABC理論

そうです。感情は出来事から直接引き出されるのではなく、その出来事をどう解釈し、意味づけるかという、自分自身の考えによって生み出されているのです。心理学者アルバート・エリスは、これを「ABC理論」と名付けました。

ABC理論

※beliefは「信念」、consequenceは「結果」という意味ですが、あえて上記のように訳しました。

考え方を変えてみると、感じ方も変わる

A(出来事)が変えられるならいいですが、世の中にはいかんともしがたい状況というのがありますね。そんなとき、C(感情)を直接変えようとしてもなかなか難しいです。

そこで、B(考え)に注目してみます。もしも、自分で自分をわざわざ惨めにしたり、追い詰めたり、不自由にしたりするような考え方をしているなと気づいたら、「この考えは本当に正しいんだろうか。もっと合理的で、自分や回りを幸せにするような考え方はできないだろうか」と検討してみます。

そして、考え方が変わると、自然と感じ方も変わってきます。たとえ、嫌な気持ち自体が無くならないにしても、それに巻き込まれて訳の分からない行動に走るということはなくなります。

あなたも嫌な気持ちを味わったとき、後からでかまいませんから、「あの気持ちはどんな考え方から生まれたんだろうか」と振り返ってみてください。

次回は、多くの人が陥りがちな、自分で自分を追い詰める非合理的なBelief(考え)を紹介します。

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