効果のある正しいほめ方

スクールソーシャルワーカーだより スクールソーシャルワーカーだより

2009年7月号

今月も、子育てのヒントをお話しします。今回のテーマは「ほめ方」です。効果のある正しいほめ方とはどういうものでしょうか?

ほめるとつけあがる?

「子どもはほめて育てよう」という言葉をよく聞きますね。一方で「ほめるとつけあがって努力しなくなる」と、まことしやかに語られることがあります。

しかし、心理学的な様々な調査やテストでは、「ほめるとつけあがって努力しなくなる」という事実は確かめられていません。すなわち、このような考え方は、事実に基づかない単なる(そして有害な)偏見だということです。

あなたご自身のことを考えてみてください。「最近、料理の腕が上がったね。とてもおいしいよ」とか「最近、仕事でがんばっているね。君は我が社の誇りだよ」とか言われたら、明日から手を抜こうと思いますか? むしろ、もっとがんばろうと思うのではないでしょうか。

万が一、つけあがって努力をしなくなったとしても、そのときにビシッと叱ればいいだけのことです。恐れないで、どんどんお子さんをほめてください。

ほめることの危険

しかし、この「ほめる」という行為、使い方によってはかえって困ったことになる危険もあります。

と言っても、ほめることがすべて悪いのではなく、「相手の行ないの結果だけを見て、その結果がこちらの気に入ったからという理由で、ご褒美としてほめる」ことが危険なのです。つまり、「報酬としてのほめ」ですね。

アドラー心理学では、報酬を使って子どもを育てることについて、次のような危険を挙げています。

(1) 褒美をくれる人と、くれない人に対する態度が露骨に変わるようになる

お手伝いをしたとき、おばあちゃんは小遣いをくれるけれど、お母さんはくれない。すると、おばあちゃんの言うことは聞くけれど、お母さんの言うことは聞かなくなります。

(2) 褒美の裏にある罰を恐れ、評価する人の目を気にして精神的に不安定になる

報酬というのは、「私が気に入ることをしたらご褒美をあげる」というものです。その裏には、「もし気に入らないことをしたら褒美はあげない。それどころか罰を与える」というメッセージが隠れています。報酬か罰かは、客観的な基準によって判定されるというよりも、評価者の気分に左右されますから、評価される相手はオドオドしてしまいます。

(3) 仲間との不健全な競争意識をあおりやすい

競争相手が少なければ少ないほど、自分が報酬を独占できます。ですから、他の人の失敗や弱点を言いつけたり、足を引っ張ったりするような行為を引き出してしまいます。

(4) だんだんエスカレートしないと、効かなくなってくる

最初は10円でお手伝いをしてくれていても、そのうち50円、100円、500円と、要求がエスカレートしていきます。

(5) 褒美を得るための、不正な手段を助長しやすい

報酬を得ることが目的ですから、手段を選ばなくなりがちです。たとえばカンニングしてでも良い成績を取ろうなどとするかもしれません。

プロセスをほめよう

では、どのようにほめればよいのでしょうか。いくつもポイントがありますが、今回はその一つをお話しします。それは、「結果だけを見て、それがこちらの気に入るか気に入らないかで評価するのではなく、結果(それが良くても悪くても)に至るプロセス過程)に注目してみましょう」ということです。

この結果が出るまでに、この子はどんな努力をしたでしょうか。どんな工夫をしたでしょうか。そのプロセスで、何か「これはこのまま継続してやり続けて欲しい」「伸ばしていって欲しい」と思う部分はないでしょうか。探せばきっとあるはずです。

ある高校の硬式野球部の監督さんは、たとえば選手がバントを失敗したとき、今までなら「何やってるんだ! ちゃんとボールを見ろ!」と怒鳴っていました。しかし、ある時から「よし、ナイスファイト! よく怖がらないでボールに食らいついたな!」などと、プロセスをほめるようになりました。

その結果、選手たちはどんどん自信をつけていき、創部数年で甲子園に出場し、いきなり準優勝を飾りました。しかも、勝った試合は、すべてピンチをひっくり返した逆転勝ちでした。それだけ精神的に強くなったということです。

結果ではなくプロセスをほめるようにしてみてください。きっとすばらしいことが始まります。

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