”いいね!”の子育てへの活用

スクールソーシャルワーカーだより スクールソーシャルワーカーだより

2015年12月号

この記事では、SNSで使われる「いいね!」を子育てに応用する方法を提案します。それは安全な方法ですが、カルト団体がSNSで行なっている手法でもありそれだけ有用だということです。

カルトの手口

皆さんは、Facebook、LINE、Instagramなどの、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス。インターネット上で人と人とがつながり交流するのを支援するサービスのこと)を利用していらっしゃいますか? 私も密かに(?)利用していますが、もう何十年も会っていない中学や高校時代の友だちが参加しているのを発見して、交流が再開するなど、けっこう楽しませてもらっています。

ただ、SNSには様々な危険も潜んでいます。その一つ、SNSを使ったカルト団体の勧誘戦略についての話を最近聞きました。

「いいね!」を活用した勧誘

最近、カルト的な性格を持つ宗教団体などが、SNSを利用して若者を勧誘しているそうです。その手口のひとつが、「いいね!」の活用です。

FacebookなどのSNSには、他の人が投稿した記事や写真などに対して、読者が共感したり感動したり感心したりしたことを表すための、「いいね!」という機能があります。その投稿の下の方にある「いいね!」のボタンやリンクをクリックすると、「いいね!」の数が1つカウントされます。そして、「いいね!」を押してくれた人の名前や人数が、投稿した本人や読者に分かるようになっているのです。

いいね!

「いいね!」をたくさんつけてもらえると、投稿した本人としてはけっこううれしくなるものです。逆に全く「いいね!」がつかないと、ちょっとブルーになったりします。あまり気にしすぎると、投稿のたびに一喜一憂することになり、かえってSNSに参加していることがストレスの種になってしまうのですが。

カルトは、この「いいね!」を喜ぶ人の心理につけ込もうとします。勧誘者は、ターゲットの人にいきなり勧誘のメールを送りつけたりしません。そんなことをすれば、警戒されて心を閉ざされてしまいます。ですから、ターゲットさんの投稿した記事に対して、「いいね!」を押します。これを何度も繰り返します。

すると、ターゲットさんはうれしくなって、「いいね!」をつけてくれた人のページを訪問するようになります。そして、ターゲットさんも勧誘者の投稿に「いいね!」を押すようになります。そのうち、勧誘者はターゲットさんの投稿に、短いコメントを残すようになります。すると、ターゲットさんはさらに勧誘者に心を開き始め、ターゲットさんの方でも勧誘者の投稿に対してコメントをするようになります。こうして少しずつ交流を深めながら、徐々にカルトの話に持っていくのです。

承認欲求

今回紹介したカルトの手口で重要なのは、「人は強い承認欲求を持っていて、それを満たしてくれた人に心を開く」という原則を利用している点です。もちろん、私たちは、カルトを支持するわけではありません。しかし、相手を支配したり利用したりするためでなく、お互いに幸せになるためであれば、この原則を日常の子育てや人間関係に生かすことは、むしろすばらしいことでしょう。

相手に対する「いいね!」という承認メッセージは、別にネットを使わなくても送ることができます。「いいね」「よくできたね」「がんばったね」「ここのところを工夫したね」「優しいね」「助かるなあ」「うれしいなあ」など、面と向かって直接話したり、手紙やメモに書いたりして伝えることができますし、親指を立てたり、親指と人差し指でOKサインを作ったり、ウィンクしたり、肩を軽く叩いたり、握手したりするなど、動作によって伝えることもできます。

当たり前の行動に「いいね!」

特に、確かに望ましい行動だけれど、人からわざわざほめてはもらえないような、できて当たり前と思われがちな普通の行動に対して、さまざまな「いいね!」を送るというのが、重要な心構えです。

誰が見てもすばらしい行動をしたときには、多くの人から承認をもらえます。それだってうれしいわけですが、いつもホームランを打ち続けるような生き方はできません。凡打に終わることだってあります。

それでも、「ピッチャーゴロを打ってしまいアウトになる可能性がとても高いのに、最後まであきらめず一塁ベースに向かって全力で走っていった」など、少しでも望ましい部分、今後伸びる可能性が少しでも見える部分があるなら、それに対して「いいね!」を送りましょう。

すると、きっと相手はあなたのことを信頼し、あなたにもっと喜んでもらおうと思うようになって、ますます望ましい行動をするようになります。

バックナンバー一覧へ   トップページへ

コメント コメントありがとうございます!

タイトルとURLをコピーしました