理由を添えてお願い

スクールソーシャルワーカーだより スクールソーシャルワーカーだより

2023年7月号

今回のテーマは、「子どもが困った行動をしているとき、どのように伝えればそれを修正しやすいか」です。

小さな子どもを育てているママたちの子育てサークルに月1回お呼ばれして、子育て(や夫育て)に関するお話をさせていただいています。

子育てサークルの様子はこちらの写真付きページをご覧ください。

先月この子育てサークルでとあるスキルを紹介したところ、さっそく実践なさったママさんたちから「効果があった!」との報告をいただきました。そのスキルとは……。

困った行動の修正方法

子どもは、親が「困るなぁ」と思うような言動をすることがあります。そんなとき、どう伝えたら子どもは言うことを聞いて行動を改めてくれるのでしょうか? 今回は望ましい行動を引き出しやすい伝え方のコツを紹介します。

子どもには自由意志がある

まず意識していただきたいのは、「子どもを100%思い通りに動かす方法なんかない」という事実です。仮にあったとしても教えるわけにはいきません。なぜなら、私がそんな危ない方法を知っていることが世間にバレたら、私は確実に友だちをなくしますから。

ただ、100%ではないけれども「成功率」」が高い方法と、低い方法の区別はあります。成功率が高い方法は、「相手が自由意志を持っている」ということを尊重する関わり方です。

ほとんどの人は、強制されることを嫌います。それは自由意志を持っているからです。ですから、相手が私たちに「強制された」と感じるような関わり方をしてしまうと、相手は心を閉ざしたり反発したりして、かえってこちらが困る行動を続けることでしょう。

強制の典型例

相手に行動を強制する典型的な関わり方は、以下のようなものです。

  • 命令……「早く片付けなさい!」
  • 脅し……「そんなことやってると、おやつ抜き!」
  • 嫌み……「中学生にもなって、言われないと宿題を始められないの?」
  • 泣き落とし……(涙は相手に罪責感を与えることで、行動を強制する効果があります。)
  • 質問を装った非難……「どうしてそんなことをするんだ!?」「何やってんの!?」

ご自分が誰かからこういう関わり方をされたらどう感じるか、考えてみましょう。きっと嫌な気持ちになるでしょうし、喜んで相手の言うことに従いたいとは思わないことでしょう。

理由を添えてお願いしてみよう

では、相手が「強制された」と感じにくい伝え方はどういうものでしょうか。それは「理由を添えてお願いする」というやり方です。「こういう理由で、こんなふうにしてもらいたいんだ。そうしてもらえるとうれしい(こんなふうに助かる)」というふうに。

たとえば、いつも帰ってきて園服をソファーにかけて、すぐにハンガーに掛けない幼稚園のお子さんがいます。いつもだったらママさんは、

母

また脱ぎっぱなし! 早く掛けなさい!

そんなふうに怒っていたそうです。しかし、お願いスキルを学んでさっそく実践してみました。

母

あーん、これだとママや妹ちゃんが座れなくて困る~。

だから園服をハンガーに掛けて片付けてくれるとうれしいなぁ。

お願い!

すると、「あー、ごめんごめん」といいながらすぐに片付けてくれたとのこと。

このスキルを実践したママさんたちからは、

子どもたちが素直にお願いを聞いてくれたのもさることながら、

自分自身の心が落ち着いていることに感動した

との感想をいただきました。いつもプリプリ怒っていたのでは、こちらの心も疲弊しますものね。

具体的な行動を示すこと

このやり方を実践する際の注意点としては、「具体的な行動」の形で伝え、お願いすることです。

たとえば、「ちゃんと片付けてちょうだい」というような伝え方はあまり具体的とは言えません。というのも、親が考える「ちゃんとする」と子どもが考える「ちゃんとする」の間にずれが生じる可能性があるからです。ズレがあるママ伝えてしまうと、子どもはちゃんと片付けたつもりなのに親からまた叱られることになるでしょう。それでは「親の言うことを聞こう」という気持ちが萎えてしまいます。

ですから、「園服をハンガーに掛けてね」「帰ってきたらすぐに宿題を始めてね」というふうに、具体的な行動の形で伝えるようにしましょう。

バックナンバー一覧へ

コメント コメントありがとうございます!

タイトルとURLをコピーしました