【教える技術1】行動に注目

スクールソーシャルワーカーだより スクールソーシャルワーカーだより

2015年4月号

子どもを望ましい方向に育てるためには、「教える技術」を身につけていなければなりません。まずは子どもの「行動」に注目してみましょう。

名選手、必ずしも名コーチならず

スポーツの世界で、現役時代に華々しい活躍をした人が、引退後に必ずしも良い指導者になるとは限りません。逆に、現役時代は万年補欠だったのに、指導者になったとたん次々と名選手を生み出す人もいます。仕事でも、平社員の時代にはトップの成績を叩き出す有能なセールスマンだったのに、リーダーに抜擢されると部下たちの営業成績をちっとも上げられないという人もいます。

それは、「自分が最高のパフォーマンスを発揮するための技術」と、「他の人が最高のパフォーマンスを発揮できるよう教えるための技術」は、全く別物だからです。技術は、学んで、練習しなければ身につきません。指導者になったからといって、すぐに効果的な(すなわち、選手や部下や生徒がぐんぐん成長するような)指導ができるわけではないのです。

親や教師も同様です。子どもを望ましい方向に育てるためには、教えるための技術を身につけていなければなりません。教師の場合には大学や研修などで学ぶ機会がありますが、親の場合、「親になるための研修」を受けてから子どもをもうけるなどということはまずありません。そんなわけで、しばらくの間、「教える技術」についてお話しさせていただきます。

結果は行動の産物

「教える技術」を学ぶ際、最初に意識していただきたいのは次の点です。

たいぢ
たいぢ

私たちが注目しなければならないのは、相手の「行動」です。

気合ややる気ではありません。

結果、すなわち学業やクラブ活動や仕事の成績などはもちろん大事です。しかし、結果とは日々の、あるいは一瞬一瞬の行動の集大成です。相手の行動が変わらなければ、いくら「気合いだ、やる気だ、根性だ!」と檄を飛ばしても、結果は変わりません。

子どもなり、部下なり、後輩なり、選手なりが望ましい結果を出していないのなら、結果に至るまでのその人の行動がふさわしくないということです。望ましくない行動を見つけ出し、望ましい行動ができるように援助する……それが親や教師や上司やコーチの務めです。根性論が生きるのは、相手が十分に望ましい行動を身につけてからです。

行動を修正するための5つの要素

行動を修正するために必要な要素は以下の5つです(これは幼稚園のお子さんにも有効です)。

  1. どの行動が問題なのかを具体的に指摘する。問題にするのは、やる気や気持ちではなく、あくまでも行動です。
  2. どうしてその行動が問題なのかを、相手に分かりやすく説明する。
  3. 代わりに身につけるべき望ましい行動がどういうものかということを、具体的に示す。
  4. どうしてその行動が望ましいのかを、分かりやすく説明する。
  5. その望ましい行動をするよう提案する。

必要なのは、怒鳴ったり体や机を叩いたりにらんだりすることではなく、「相手にとって分かりやすい説明や提案」です。こちらが感情的になると、むしろ論理的で理解しやすい説明ができにくくなるでしょう。また、聞く相手は萎縮したり防御的になったりして、かえって理解してもらいにくくなるかも知れませんね。それでは、「教える」という点ではまったく意味がありません。

いくら指導しても相手の行動が変わらないとすれば、相手のやる気の問題ではなく私たちの教え方に問題があるのだ……そう思ってみましょう。

  • ちなみに、この場合の「私たちに問題がある」とは、「私たちはダメな指導者だ」という意味ではありません。「やり方を修正するだけで良い指導ができるようになる」という意味です。

すると、どう関わったらいいかが見えてきやすくなりますし、イライラすることも減ってくるはずです。是非、「行動」に注目してください。

バックナンバー一覧へ   トップページへ

コメント コメントありがとうございます!

タイトルとURLをコピーしました