【ありがとうの力】感謝された子どもは力が引き出されます

スクールソーシャルワーカーだより スクールソーシャルワーカーだより

2015年3月号

今回のキーワードは「ありがとう」。私たち周りの大人が感謝を表すと、子どもたちから生きる力とか、問題に立ち向かっていくやる気や根気が引き出されます。

本田宗一郎氏の話

世界のホンダの創業者、本田宗一郎さんは、66歳の若さで社長職を退くと会長職にも就かず、日本中、世界中のホンダの事業所(営業所、販売店、工場)を巡り歩いたそうです。日本だけで700箇所、海外の事業所を含めれば膨大な数になります。それらを、従業員が2,3人しかいないような地方の店や工場も含めすべて回りました。

そしてそれぞれの事業所では、従業員一人一人の手を握って、「ありがとう。いつもありがとう」と頭を下げます。整備士がオイルで汚れた自分の手を洗いに行こうとすると、それを止めて「この油まみれの手が尊いんだ」と、そのまま握手することを求めたとも言われています。

周りの人たちはこう尋ねました。「創業者自らが事業所に現れて手を握ってくれたら、従業員のモチベーションが上がり、みんながんばって仕事をするようになってますます儲かる。だからあんなことをしているのでしょう?」と。しかし、本田さんはそうではないと言いました。「本当にみんなのがんばりをありがたいと思っている。だから、ただただお礼を言いたくて回っているんだ」と。

「ほめて、やる気にさせて、思い通りに動かしてやろう」などという裏の策略がない、本気の感謝で握手するので、握手してもらった従業員はみんな感動して涙を流します。その涙を見て、本田さんも泣きながら握手を続けます。結果として、従業員のやる気は急上昇です。あくまで「結果として」ですが。

ありがとうは魔法の言葉

人はほめられると、やる気が生まれます。しかし、「ほめる」には危険な側面もあります。「ほめる」は評価であって、ほめ手の要求通りのことをしているうちはほめられますが、十分だと評価されなければ無視され、気に入らないことをしてしまうと叱責されることになる、という危険です。

そこで、単に結果だけをほめられて育つ子は、周りの大人の反応を気にしながら成長していきます。そして、かえって「何が起こっても、自分は必ず乗り越えられる」というような無条件の自信、「だから、失敗を恐れずいろんな事にチャレンジしよう」という積極性、誰も見ていなくてもやるべき事をやり通すという責任感、誰かに強制されなくてもやるという自発性などが育ちにくくなります。

ほめるなら、いつでも、結果が好ましくないときでも、とにかくほめましょう。そのためには、

  • 結果だけでなく、チャレンジしたことそのものをほめましょう。
  • 失敗したけれど、やりきったことをほめましょう。
  • あれこれ工夫してみたことをほめましょう。

すると、やる気に満ちた、責任感の強い子に育ちます。

さらにやる気や責任感を引き出す言葉かけ

そして、ほめるよりもさらにやる気を引き出し、責任感や自信を育てるのが「感謝」です。「ありがとう」という言葉には、強烈なエネルギーがあります。どうぞ、日頃からお子さんに「ありがとう」をシャワーのように注いでください。

感謝の種が見つからなければ、感謝できるような仕掛けを施しましょう。たとえば、家事を分担させるとか。分担してもらう家事は、お子さんの年齢や能力に応じていれば、新聞を郵便受けから取ってくるでも、食事後に食器をシンクまで運ぶでも、何でもかまいません。大切なことは、それを子どもがやったなら「当たり前だ」と無視しないで、必ず「手伝ってくれてありがとう」「助かるよ、サンキュー」などと感謝を表しましょう。

あなたも、毎日仕事に行ったり、食事を作ったりするのを、「それは親として、夫として、妻として、やって当然のことで、別に偉くも何ともない」と無視されるより、「いつもお仕事ご苦労さま。私たちのためにありがとう」とか「毎日家族のためにおいしい料理を作ってくれてありがとう」と感謝され、ねぎらってもらえる方がやる気が出るでしょう? 子どもたちも同じです。

皆さんのお宅はすでにそうなっていると思いますが、ますます感謝の言葉が乱れ飛ぶご家庭になれますように。

バックナンバー一覧へ   トップページへ

コメント コメントありがとうございます!

タイトルとURLをコピーしました