カンファレンスに学ぶ実のある会議・話し合いの持ち方

スクールソーシャルワーカーだより スクールソーシャルワーカーだより

2013年12月号

職場での会議や、夫婦や親子での話し合いなど、私たちはさまざまな会議や話し合いの場に参加する機会があります。それがただ時間を潰しただけで意味のないものになってはもったいないですね。そこで、福祉や医療現場で行なわれている「カンファレンス」から、実のある会議・話し合いを学びましょう。

カンファレンスとは

私の家内は最近介護の仕事を始め、来月行なわれる介護福祉士の資格試験に向けて猛勉強中です。先日「カンファレンス」(対応検討会議)についての話題を振られたため、私もスクールソーシャルワーカーの研修で勉強したことについて、いろいろ話をしました。

カンファレンスというのは、「担当者が集まって、支援対象者に対してにそれぞれがどう対応するかを話し合う会議」のことです。大病院を舞台にした医療ドラマなどでよく出てきますが、治療前にいろいろな科の医師、看護師、技師などが集まって会議を開きますね。あれもカンファレンスです。

医療カンファレンスでは、まず患者さんの症状を確認し、それを引き起こしている原因を見立てます。そして、その原因に基づいた治療方針が決定されます。こういった会議が、福祉の現場でもよく行なわれているのです。もちろん、学校や家庭や部活動や職場や地域など、様々な集団で応用できます。

(1) 情報収集

医療カンファレンスでは、会議の前に、問診、触診や検査などにより、患者さんがどんな苦しみや問題を抱えているかをつぶさに調べ上げます。この情報収集が不十分だと、正しい診断が下せませんから、実際の治療も間違ったものになるでしょう。

学齢期の子どもたちが抱える問題でも、同じように「学校を休みがちである」という症状が現れていたとしても、その背景は人によって様々です。たとえば、

  • 友だちにいじめられている。
  • コミュニケーション力が未発達で友だちの中で浮いている。
  • 担任と反りが合わない。
  • 発達のアンバランスさのせいで授業について行けない。
  • ネットゲームにはまって夜更かしするため、朝起きられない。
  • 軽度のうつ病である。
  • 親に虐待されている。
  • 家が経済的な不安を抱えている。
  • 小さい時から叱られてばかりで自信喪失している。

などなど……。

背景が異なれば欠席が続く原因も異なり、原因が異なればその子や家庭への対応も自ずと違ってきます。ですから、まずはできるだけ客観的に当事者の置かれている環境や内面を調査しましょう。

家でお子さんの悩みを聞いたり、お子さんが抱えている問題について話し合ったりする時も、すぐに「これは大変だ!」と感情的になったり、お子さんの話だけから(あるいは特定の人の話だけから)「これは○○が原因に違いない」と決めつけたりしないで、いったん冷静になり、学校その他と連携しながら十分な情報集めを心がけるといいでしょう。

(2) 見立て(アセスメント)

次に、客観的な証拠を元に、「こういう原因、あるいは誘因によって、こういう問題が生じているのではないか」という仮説を立てます。その際大切なのは、勘と経験に基づいて「こういう原因に違いない」と決めつけないということ。必ず、収集した客観的な証拠に基づいて見立てをするということです。

そして、関係者一同と見立てを共有します。家族間で、あるいは家庭と学校との間で見立てにズレがあれば、対応がばらばらになります。そうすると関わられる子どもは混乱するばかりですし、十分な効果も見込めません。親子で、夫婦で、担任その他の関係者たちと、充分に話し合いましょう。

(3) 対応計画

問題が生じるカラクリを見立てたら、それに基づいて対応計画を立てます。見立てをするだけでは意味がありません。

たとえば、「この子が学校に来たがらないのは、授業について行けないからだ。それは発達上のアンバランスさによって、一斉指導では教師の説明や指示が十分理解できないからだ。この見解は、本人の訴えや療育センターの診断結果からも裏付けられる」というような見立てをしたとします。しかし、それだけでは何も変わりません。

誰が、誰に、何を、いつまでに

見立てに基づいて、関係者一人一人について、「誰が、誰に、何を、いつまでに」行なうかを決定します。

「誰が、誰に、何を、いつまでに」を明確にすることがとても重要です。そうでない計画は、結局誰も何もしないことになるでしょう。自分以外の誰かがやるだろうと思ったり、忙しさにかまけてつい後回しにされたりするのです。すると結局何も変わらないことに。そういう話し合いは時間とエネルギーの無駄ですね。

(4) 評価と再計画

会議や話し合いで決定した計画は、必ず実行したかどうか振り返り、効果を評価しなければなりません。当初の計画通りの結果が出ていればそれでよしですが、もし思うような結果になっていなければ、情報収集や見立てをやり直し、計画を修正しなければなりません。

今回紹介した方法は、お子さんの問題についての家族の中でのちょっとした話し合いや、個人が立てる計画にも応用できます。皆さんもこの一年を振り返り、年初に立てた計画やお子さんについて決心した対応を評価し、来年に向けて再計画を立ててみませんか?

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