児童虐待防止法と通告の義務

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2013年2月号

先日、児童虐待に関する勉強会に出席しました。日本では、子どもたちに対する虐待を予防し、残念ながら発生してしまった場合には、それをできるだけ早期に発見し、援助の手をさしのべられるようにするため、「児童虐待の防止等に関する法律」(H12年制定・16年改正)という法律(通称、児童虐待防止法」が定められています。

この法律では、学校などの公的機関だけでなく、すべての国民に(もちろんあなたにも)児童虐待防止についての義務を負わせていますので、今回はその点について簡単に解説させていただきます。

児童虐待とは

この法律において、児童とは18歳未満の者を指し、保護者が行なう以下の行為を児童虐待と呼んでいて、してはならないと定めています。

  • 身体への暴行
  • 児童へのわいせつ行為と、わいせつ行為をさせること
  • 心身の正常な発達を妨げる減食・長時間の放置
  • 保護者以外の同居人による前記の行為と、その行為を保護者が放置すること
  • 著しい暴言・拒絶的対応・著しい心理的外傷を与える言動を行うこと

理由は問わない

まず、暴力や暴言を、理由によって区別していないことに留意してください。

「しつけのため」「子どものため」「愛のムチだ」というような保護者側の理由づけは、暴力や暴言を正当化することにはならないということです。

暴力を見せるのも虐待

また、児童の前で別の人に暴力・暴言を加えることは、児童本人に直接向けられた暴力・暴言でなくても、その子に著しい心の傷を与えるので児童虐待に該当します(面前DV)。

配偶者間暴力(DV)を我慢したり我慢させたりすることは、子どものためにそうするのだとしても、実は児童虐待に荷担することになってしまいます。

もしあなたが配偶者間暴力の被害者だったり、被害者を知っていたりするのであれば、しかるべき機関に相談して解決に向けて動き出しましょう。それが子どもをも救います。

大玉村では、健康福祉課で相談に乗ってもらえますし、緊急の場合には警察でも対応してもらえます。

通告の義務

同法第6条では、「児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者は、速やかに福祉事務所・児童相談所に通告しなければならない」と規定されています。特に知っておいていただきたいポイントは、以下の通りです。

通告の義務を負う人

教職員、保育士、医療関係者などだけでなく、近隣住民などあらゆる国民は、児童虐待と思われる事例を発見したら、児童相談所等に通告しなければなりません。

この通告義務は、刑法が定める「守秘義務」よりも優先されると明言されています。それくらい重い義務だということです。

疑いの時点でも通告しなければならない

H16年8月13日文科省通知には、「虐待の事実が必ずしも明らかでなくても、一般の人の目から見れば主観的に児童虐待があったと思うであろうという場合であれば、通告義務が生じる」とあります。

事実の確認は児童相談所等が行ないます。本当は虐待ではないかもしれないという恐れについては気にしなくていいので、これは児童虐待ではないかという疑いを持った時点で、とにかく速やかに通告することが求められています。子どもの命・体・心を守ることが最優先課題だからです。

通告先

虐待が現に行なわれていることを知ったり、虐待を疑ったりした場合には、児童相談所、村の健康福祉課、小中学校・幼稚園・保育所、教育委員会でも構いません。とにかく、速やかに公的機関に連絡をお願いします。

以下の番号に電話をかけると、お住まいの地域の児童相談所につないでもらえます。

児童相談所全国共通ダイヤル:189(いちはやく)

なお、各機関に通告や情報提供をしたからといって、誰が通告したかなどということが、当事者家族に明らかにされることはありませんので、ご安心ください。

保護者も援助対象

児童虐待防止法は、虐待をする保護者を罰することを目的としているわけではありません。

虐待をしてしまう保護者の多くが、精神的、身体的、経済的、能力的、あるいは社会的に何らかの課題を抱えて悩んだり困ったりしておられます。どう育てたらいいのかが分からないのかもしれません。ご自分も虐待の被害者だったというケースも結構多いです。すなわち、虐待する保護者も援助を必要としているのです。

通告の結果、公的機関が家庭の中に入ることで、保護者自身も助けを受けることができます。そして、虐待を「しなくてもいい」状態になることが期待できます。

ですから、児童虐待と思われるケースを見聞きしたら、被害に遭っているお子さんだけでなく保護者のためでもあると信じて、思い切って通告してください。

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