2024年2月号
「プラシーボ効果」(プラセボ効果)は、偽薬効果とも呼ばれます。偽薬(ぎやく)は、薬のような見た目をしていながら、実際には薬効が無いもののことです。偽薬を「これはとてもよく効くお薬です」と騙して飲ませると、本当に症状が改善してしまうことをプラシーボ効果と呼びます。今回は、このプラシーボ効果を子育てに応用しようというお話です。
病は気から
昔から「病は気から」と言います。もちろん、インフルエンザや骨折を気合だけで治すことはできません。しかし、「絶対治る」と信じて治療に取り組むのと、「どうせダメだ」と信じて取り組むのとでは結果が違うというのは、多くの人が体験したり見聞きしたりしているのではないでしょうか。
また、膠原病でひどい痛みを覚えていた人が、漫談のビデオを見てゲラゲラ笑っているときには、痛みをほとんど感じなかったと語っています。
私たち人間の心と体は密接に関係しているようです。だからこそ、偽薬なのに「効く」と信じたせいで、本当に効いてしまうというプラシーボ効果が起こるのでしょう。
プラシーボ効果を子育てに生かす
プラシーボ効果を子育てに生かすというのは、大人が子どもにこうなってほしいと期待していることを伝える際に、「あなたはすでにそうなっている」という伝え方をする、ということです。
たとえば、「弟妹や友だちに親切な行動ができる優しい子になってほしい」と思っているのなら、子どもにいつも「あなたは親切だね」「いつも弟たちに優しくしてくれてうれしいな」というふうに伝えます。
その際、「いつも乱暴な言い方するんだから。もっと優しい言い方をしてちょうだい」とか「もっとお友だちには優しくしなさい」とかいう言い方をしたらどうなるでしょうか。「優しくなれ」ということは、「今は優しくない」ということですね?
すると子どもの脳は、「あなたは乱暴者だ」というふうに言われたと受け取ります。乱暴者が親切にしてはおかしいですから、その子はますます乱暴者になることでしょう。つまりプラシーボ効果とは逆の効果(ノセボ効果)を発動させてしまいます。
「言葉が人間の無意識プラスの影響、またはマイナスの影響を与える」ということについては、以下の記事もぜひお読みください。
→ 【アファメーションの作り方】無意識を味方に付けて成功しよう
ですから、「これからこうなってほしい」と期待していることは、「すでにそうだ」という伝え方をするよう心がけましょう。
あなた自身が信じていますか?
プラシーボ効果を子育てに応用する際に重要なポイントは、「子どもにそれが本当だと信じさせる」ということです。そして子どもに信じさせるためには、こちらが本当だと信じていなければなりません。自分で信じていないことを子どもに伝えても、子どもはそれを嘘だと見抜きます。そして、「変なテクニックを使って、俺のことを思い通りに動かそうとしているな」と感じ、反発するでしょう。それでは逆効果です。
探せば証拠は必ず見つかる
では、どうしたらまず自分自身が「この子はすでにそうなっている」と信じることができるでしょうか。それは、「すでにそうだ」という前提で証拠を探してみることです。たとえば「あなたはすでに優しい子だ」と伝えたいなら、その子が優しい言動をしている場面を探してみましょう。
2割の問題行動にばかり注目していませんか?
以前、いわゆる非行少年と呼ばれる子どもたちと関わっている施設のカウンセラーさんとお話ししたことがあります。その方は次のようにおっしゃいました。
非行少年と呼ばれている子たちのすべての言動のうち、8割は問題のない行動です。
しかし、多くの親や先生や世間の人たちは、残り2割の問題行動に8割の注目を向けてしまうのです。
そうじゃなくて、8割の普通の行動や望ましい行動の方に注目してあげられたら、きっとあの子たちも変われるはずなのに。
「この子はすてきな子だ」「この子はすばらしい子だ」とまず信じて、その信頼を裏付けるような証拠を探してみましょう。そして見つけたら、それを子どもに伝えましょう。シャワーのように。
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