大人が子どもに贈る最高のプレゼント

スクールソーシャルワーカーだより スクールソーシャルワーカーだより

2009年10月号

今回は、周りの大人たちが子どもたちに贈ることができる、最高のプレゼントは何か……というお話です。

無意識のいたずら

A子さんは、仲間内でちょっと噂になっていた女性です。というのは、好きな男性ができると、猛烈なアタックをかけます。そして、相手の男性が振り向いてくれて、お付き合いが始まったとたんに気持ちがさめて、別れることになってしまうのです。

こんなことが何度も続いたため、A子さん自身もこれはおかしいと思い、カウンセリングを受けました。そして、小さいときから「おまえはダメなヤツだ」と言われ続けたため、人間として女性として、自分には価値も魅力もないと思い込んでしまったということが分かってきました。

実際には、十分魅力的な方なのですが、無意識にそう思い込んでいるのですね。そして、この思い込みが、先ほど申し上げたような、2つの極端な行動を生み出しているのだということも。

極端な行動の理由

自分には価値も魅力もないから、じっとしていたのでは男性が向こうからやってくることはありません(彼女はそう思っています)。誰もが欲しがるブランド品なら、黙っていても売れますが、粗悪品なら、かなり強引に押し売り・安売りしないと売れませんね。だから、ストーカーはだしの猛烈なアタックをかけるわけです。

では、相手が振り向いてくれてそれで終わりかというと、また「自分には価値がない」という思い込みがいたずらをします。高級なブランドを身につけるのは、それにふさわしいセレブだ。では、粗悪品を買うのは、やっぱりそれにふさわしい人ではないか。カラスはカラスと結婚し、スズメはスズメと結婚する。粗悪品である自分なんかと付き合おうと思ったこの男は、それにふさわしい粗悪品じゃないか……。それで、いっぺんに気持ちがさめてしまうわけです。

カウンセリングの中で、本来の自分の価値や魅力を再発見なさったAさんは、だんだんと自信を取り戻し、やがてすてきな男性にプロポーズされて結婚なさいました。

自信というのは、私たちの生き方に大きな影響を与えるものですね。そんな話を、もう一つ紹介しましょう。

失敗するイメージを持ったことがないので

アメリカのプロバスケットボールの選手で、フリースローの名人がいました。その日の試合でも、大接戦の大事な場面でフリースローを決め、チームを勝利に導きました。試合後、インタビュアーが質問しました。「あなたは、接戦で絶対に外せないという場面でも、大差で勝っている試合と同じように落ち着いていますね。外したらどうしようと思って、緊張したりしないのですか?」

するとこの選手は答えました。「私は、自分がゴールを外すなんてイメージを持ったことがありません。つまり、私が投げたボールは、必ずゴールに入るものだと思っているのですよ」。そして、こんな話をしました。

お父さんとのバスケごっこ

彼がバスケを始めたのは、まだ歩けるようになって間もなくのことでした。バスケが大好きだったお父さんが、おもちゃのボールを彼に与え、くずかごをゴール代わりにして、シュートを打たせたのです。そして、百発百中、すべてのシュートがゴールに入ったのでした。

なぜか? それは、ボールが飛んだところにお父さんがくずかごを移動させ、受け止めてくれたからです。そりゃあ、百発百中のはずですね。

ずるいですか? でも、幼いときに、お父さんにずっとそうしてもらったおかげで、彼は自分のバスケの才能に大きな自信を持ちました。そして、どんなに緊張するような場面でも、自信を持ってフリースローを打つことができるようになったのです。

子どもへの最高のプレゼント

私たち大人が、子どもたちにあげられる最高のプレゼントの一つは、どんなことがあっても揺るぐことのない自己肯定感……「自分はすばらしい存在であり、だから必ずすばらしいことができるんだ」という自信をつけさせてあげることではないでしょうか。

次回は、どうやってそういう自信を子どもたちに与えられるかという話をさせていただきます。

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