子どもの自信を育てるために

スクールソーシャルワーカーだより スクールソーシャルワーカーだより

2009年11月号

前回、子どもたちに、どんなことがあっても揺るぐことのない自信……「自分はすばらしい存在であり、だから必ずすばらしいことができるんだ」という自己肯定感をつけさせてあげることが大切だと申し上げました。

そのためには、子どもを大切に扱うということです。具体的に、行動によって「大切だ」ということを表すのです。今日はその一つをお話しします。

話を聴くこと

それは、子どもの話にじっくりと耳を傾けることです。しかも、途中で口を挟んで、直したり教えたりしないで、最後まで聴くこと。

そうすることで、「あなたの話には、じっくり耳を傾ける価値があると思う。あなたと過ごし、あなたと話すために時間を取ることは、無駄どころか、私にとって大きな喜びだ」というメッセージが、無言のうちに伝わります。そして、そうしてもらうことで、子どもは「自分はお父さん、お母さん、先生たちにとって大切な存在なんだなあ」ということを実感するのです。これが自信につながります。

なかなか話が聴けない大人たち

ところが、私も含めて、大人はなかなか子どもの話をじっくり聴いてあげることができません。ついつい、聴くより先に教えたくなったり、「それは違う」と子どもの話を修正したくなったり、弱音を吐かれると「そんなこと言わないで、がんばれ」と励ましたくなったり……。

聞いた話なのですが、人間はだいたい一日にしゃべる言葉の数が決まっているそうです。もちろん個人差はありますが、日本人男性の場合、一日約7千語しゃべります。一方、女性は2万語。約3倍です! 要するに、聴くよりはしゃべりたいという欲求の方が強いので、どうしても子ども(時にはご主人)の言葉の上に、自分の言葉を重ねてしゃべってしまうことになりがちです。

先日、スーパーで買い物をしている母子を観察していたら、子どもが一生懸命お母さんに話しかけているのに、それにはまったく耳を傾けないで、「いいから、早く来なさい」「そんなの触っちゃだめ」「何見てるの。ふらふらしてたら危ないでしょう」と、説教や指示のオンパレードでした。

じゃあ、男性はどうかと言えば、7千語をほとんど職場で使い果たして帰ってきます。ですから、もう家ではしゃべりたくない。というか、会話そのものが「余計な残業だ」と感じる。そうすると、じっくり子ども(や奥さん)の話に耳を傾けることが面倒になるのです。

しかも、男性の多くは、会話というものは会議と同じだと思っています。すなわち、何か結論を出すことが大事。しかし、小さな子どもの話というのは、必ずしも論理的ではありませんね。すると、お父さんはだんだんイライラしてきて、「何が言いたいんだ」「結論を早く言え」「くだらない話に付き合わせるな」と、話を途中で切ってしまいたくなります。

子どもの願いは

しかし、子どもは、ただお父さんやお母さんに話を聴いてもらいたいのです。何か結論を出したり、しつけられたり教育されたりすることが目的でしゃべるのではありません。聴いてもらうことで、「大切にされている」と実感したいのです。

意識して「直さないで最後まで聴こう」と取り組まないと、私たち大人は、なかなか子どもの話を聴くことができません。意識して、直さないで聴く時間を確保しましょう。

聴いて欲しいなら、まず聴こう

もちろん、大人には子どもをしつけ、教育する責任があります。直さないで聴くだけではしつけになりませんから、こちらから教えたり直したりすることはもちろん大切です。また、いくらしゃべりたくても、授業中とか、電話中とか、葬儀の最中など、おしゃべりしてはいけないタイミングがあることを教えることも必要です。

しかし、普段親が子どもの話をじっくり聴いてあげなかったら、子どもも親の話に耳を傾けようとはしないでしょう。子どもは親が何を語っているかではなく、何をしているかを見て教育されるのですから。

子どもが小さいときには、力で押さえつけて言うことを聞かせることが可能です。しかし、高校生ともなれば、もうその手は通用しません。「親が言ったから」という理由だけで反抗するようになるでしょう。もし、親の言葉に耳を傾け、真剣にそれを受け止めて欲しいのなら、まず親が子どもの言葉にじっくりと耳を傾けることが必要です。今より、もう少しだけ聴く時間を長くしてみませんか?

次回のテーマは、どうしたら子どもが「聴いてもらった」と満足するような聴き方ができるかということです。いくつか具体的なテクニックをお話しします。

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