前提話法で子どもの「やらされ感」をなくそう

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2026年月号

「宿題しなさい!」「早く寝なさい!」「いい加減にしなさい!」……毎日こんな言葉を何度も繰り返して、疲れていませんか? 言っても言っても変わらないお子さんに、ため息をついてしまうこともあるかもしれません。

実は、お子さんが動かない原因の一つは、言葉の「構造」にあります。今日は、ちょっとした言葉の変え方で子どもの主体性を引き出す「前提話法」についてお伝えします。

前提話法とは?

前提話法とは、ある事実や行動を「当然のこと」として言葉に組み込んで話す技法です。もともとはセールスや交渉の世界で使われてきた話法ですが、子育てや教育の場でも非常に有効です。

 通常の言い方と比べてみましょう。

  • 通常の言い方:「宿題、やるの? やらないの?」
  • 前提話法:「宿題、先にやってからゲームする? それともゲームが終わってからにする?」

通常の言い方だと、「やるかやらないか」という選択肢が子どもの頭に浮かびます。当然「やらない」という選択肢も含まれています。

ところが前提話法では、「宿題をやること」がすでに前提として組み込まれています。子どもが考えるのは「どの順番でやるか」だけです。「やらない」という選択肢が、さりげなく消えているのです。

なぜ子どもに効果的なのか

前提話法が子育てに向いている理由は、子どもの「自律性」を損なわないからです。「宿題しなさい!」という命令は、子どもに「やらされている」という感覚を生み出します。

人間はもともと、自分で選んだことには積極的に取り組み、強制されたことには抵抗感を覚える生き物です。これは大人も子どもも同じです。

前提話法を使うと、子どもは「自分で選んだ」という感覚を持てます。結果は同じでも、その感覚の違いが行動への意欲に大きな差をもたらします。人は自分の行動を自分でコントロールしていると感じるとき、より意欲的に動けるものなのです。

前提話法の具体例

以下は、どれも「やるかどうか」ではなく「どうやるか」「いつやるか」を子どもに選ばせています。親が誘導しながらも、子どもには「自分で決めた」という感覚が残ります。

片付け

「早く片付けなさい!」→「ご飯の前に片付ける? それともご飯が終わってからにする?」

就寝

「今日は早く寝なさい!」→「今日は8時に寝る? それとも8時半にする?」

登校準備

「明日の準備、まだやってないの?」→「明日の準備、今やっちゃう? お風呂の後にする?」

前提話法を使うときの注意点

前提話法はとても便利ですが、使い方を一つ間違えると逆効果になることがあります。

選択肢は3個以内に

提示する選択肢は2〜3個に絞ることが大切です。たとえば「いつ宿題やる? 何時に始める? どこでやる? どの教科から?」と一度にたくさん聞いてしまうと、子どもは混乱して動けなくなってしまいます。これは「ジャムの法則」として知られている心理現象です(2024年5月号でご紹介しました)。

選択肢は親として許容できるものに

選択肢は、子どもがどれを選んでも親として受け入れられるものにしておきましょう。せっかく子どもが選んだのに、親が「そっち?」と否定的な反応を示してしまうと、結局子どもは親の顔色を見ながら選択するようになります。それでは元も子もありません。

選択肢は幅を持たせて

いくら親が許容できる選択肢を提示するといっても、「今すぐ寝る? それとも5分後に寝る?」のように、同じような内容では意味がありません。子どもが「本当に選べた」と感じられるよう、適度な幅を持たせることがポイントです。

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