2025年6月号
親であれ教師であれ、私たち大人も人間ですから感情を持っています。そのため、子どもの言動に対して怒りを覚えることがあります。
その結果、怒りにまかせて子どもを怒鳴ったり、イライラした様子で指示を与えたりしてしまうのですが、子どもを萎縮させたり関係が悪化したりする副作用の割に、ちっとも子どもの言動が変わらないということもしばしばです。
うまく自分の感情を制御できれば、適切な指導もしやすくなります。そこで今月のおたよりでは、自分自身の怒りのコントロール方法を紹介します。
怒りの正体を知ろう
怒りは、相手から損害を受けて嫌な思いをしたとき、自分を嫌な目にあわせた相手に復讐するため、つまり罰を与えるために出てくる感情です。損害とは、たとえば、
- 朝、子どもがなかなか支度をしないため、出勤時間に遅れるのではないかと不安になった。
- 子どもがゲームばかりで宿題をしないため、将来望む仕事に就けなくなるのではないかと心配になった。
- 叩かれたので痛い思いをした。
- せっかくアドバイスしてやったのに無視され、愛情を否定されたように感じて悲しくなった。
- ふざけてジュースを床にこぼされたため、それを自分が掃除することになり疲れた。
被害と代替え行動を伝えよう
怒りを直接ぶつけてしまうと、相手は攻撃されたと感じます。その結果、相手も傷ついてあなたに罰を与えるために逆ギレしたり、耳をふさいで逃げ出したり、言い訳して身を守ろうとします。それでは、あなたの本当時伝えたいことが伝わりません。
伝えるべきは、次の2つです。これを毅然と、しかし穏やかに、「お願いの言い方」で伝えてみましょう。
- 相手のどんな言動によって、自分がどんな被害(悲しみ、痛み、心配、疲れなど)を受けたか。
- 今後はどのような行動をしてもらえると”自分が”助かるか。
怒りを鎮める7つの方法
とはいえ、今まさにカッカカッカしているときに、冷静に自己分析をして穏やかに伝えるというのは、なかなか至難の業です。そこで、まずは「6秒間怒りを表さないで待つ」ことを意識してみましょう。
人は怒りを覚えると、血中にアドレナリンが放出されて戦闘モードになります。しかし、6病患怒りに基づく行動をしないでいると、アドレナリンの濃度が低下して落ち着いてきます。
6秒間の過ごし方には、以下のような方法があります。
(1) スケーリング
自分が感じた怒りを、0点(まったく怒っていない)から10点(殺意を伴う怒り)までの10点満点で評価します。
(2) 逆唱
100から0に向かって逆に数を数えます。その際、単純に1つずつ逆唱するのではなく、「100、97、94…」と3つ飛ばしや4つ飛ばしにするなど少し複雑なやり方をすると効果的です。
(3) 思考停止
怒っているときは頭の中に、自分や相手や将来などに対する否定的な考えが渦巻いています。そこで、自分自身に向かって心の中で「ストップ!」と声をかけ、脳の中が真っ白になるイメージを浮かべたり、まったく違うことを考えたりすることで、否定的な考えのループを断ち切ります。
(3) コーピングマントラ
怒りを感じたとき、特定の言葉を頭の中で何度も思い浮かべたり、状況的に可能なら実際に口に出したりします。たとえば、「大丈夫、大丈夫」「大したことないさ」「ま、いっか!」「へー、そんなこと言うんだ。面白いなぁ」「生きてるだけで丸儲け」など。他にも、大好きな人やペットの名前など。
(5) タイムアウト
怒りを覚えたその場から、しばらく物理的に離れます。
(6) グラウンディング
ペンやスマホや本棚や壁の模様など、特定のものに意識を向けて細かく観察します。
(7) 4-7-8呼吸法
「4秒間で吸い、7秒間止め、8秒間で吐く」という呼吸を4回(慣れてきたら8回まで増やして可)繰り返します(体が痺れるなどの異常を感じたらすぐ中断してください)。
この7つのスキルをすべて行なう必要はないので、自分に合うやり方を1つ見つけて実践してみてください。きっと、穏やかにお子さんと話し合いができるようになりますよ。
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