ポジティブ・ディシプリン

スクールソーシャルワーカーだより スクールソーシャルワーカーだより

2016年月号

今回は「ポジティブ・ディシプリン」(Positive Discipline=肯定的なしつけ)についてお話しします。

つきっきりで監視してガミガミ叱りつけなくても、子どもが自ら望ましい行動を考えて、自発的に実践するようになれば、親や指導者はどんなに楽で心穏やかに過ごせるでしょうか? ポジティブ・ディシプリンはそれを実現する関わり方として注目されています。

ポジティブ・ディシプリンの原則

ポジティブ・ディシプリンの目的は、子どもが自ら考えて行動する力を身につけ、親子の関係がより強固で信頼に満ちたものになることです。そのために、次のような原則で子どもに関わります。

(1) 尊重と共感……子どもの感情や考えを尊重し、共感することで信頼関係を築く。
(2) 一貫性と構造……ルールや期待は一貫させ(大人の気分で変えない)、誤解なく明確に伝える。
(3) 自主性の育成……子どもの自己決定力を養う。
(4) ポジティブな行動の強化……望ましくない行動を無くすのではなく、望ましい行動を伸ばす。
(5) 問題解決力の育成……子ども自身に問題解決のスキルを身につけさせる。

ポジティブ・ディシプリンのスキル

(1) 感情に名前を付ける

子どもが怒っている、悲しんでいる、喜んでいるときに、その感情の名前を大人が言葉にすることで、子どもが自分の感情を理解し、表現できるように支援します。自分の感情に名前がつけられることで、自己コントロールがしやすくなります。

今、悲しい気持ちなんだね。どうしたの?

怒っているように見えるけど、何かあったの?

(2) 私メッセージの使用

親が自分自身の感情や期待を「私」を主語にして伝える方法です。子どもの行動が親にどのような影響を与えているかを伝えます。

(私は)○○ちゃんがテーブルを蹴っ飛ばすと、食器が壊れるんじゃないかと思って心配だなあ。だから(私は)蹴らないでほしいな。

(3) ポジティブな行動強化

望ましい行動を見逃さず、具体的・肯定的に認めることでその行動を伸ばします。その場合、ほめるより喜んだり感謝したりした方がより強力な影響を与えます。

おもちゃを片付けてくれてありがとう。部屋が広く使えてとても助かるよ!

(4) 自然な結果

不適切な行動をした結果を、親が尻拭いせず本人に味わわせます。

コップを持って走って水がこぼれたから、このぞうきんで拭こうね。

(5) 論理的な結果

その行動をしたらどんな結果になりそうか、教えたり考えさせたりします。

おもちゃを元の場所に戻さないと、次に遊ぶときに見つけられなくて困っちゃうんじゃない?

(6) 選択肢の提供

一定の枠内で子どもに選択肢を与えることで、自己決定力と責任感を育てます。

「りんごとバナナ、どっちを食べたい?」

(果物を食べるという枠内での選択)

宿題は今すぐやる? それとも夕食の後?

(宿題はやるという枠内での選択)

(7) 問題解決のステップ

親が問題解決の方法を一方的に教えるのではなく、子どもと一緒に問題解決のプロセスを実行することで、やがて子どもが自分ひとりで問題を解決できるようにします。

  1. 何がどう問題で、この先どうなれば解決したと言えるのか整理する。
  2. 解決策をいくつか考える(ここでは実現可能かどうかは考えず、とにかく案を出す)。
  3. 最善の解決策を選び、実行する。
  4. 結果を振り返り、うまくいっていなければ最初からやり直す。

今回は7つ紹介しましたが、取り組みやすいものからぜひ実践してみてください。

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