【セルフ・ハンディキャッピング】やる前から言い訳する人

スクールソーシャルワーカーだより スクールソーシャルワーカーだより

2019年3月号

今回のテーマは、「セルフ・ハンディキャッピング」です。

大人でも子どもでも、何かする前に、うまくいかない前提で言い訳をする人がいます。たとえば、カラオケで歌う前に、「最近全然歌ってないから、あんまり点数出ないと思うよ」とか、試験の前に、「いろいろ忙しくてあまり勉強できてない」とか。それってどうなんだろう。今回はそんなお話です。

セルフ・ハンディキャッピング

心理学では、こんなふうにやる前からうまくいかない言い訳を作り上げる行動を、「セルフ・ハンディキャッピング」と呼びます。大きく分けて「主張的セルフ・ハンディキャッピング」と「獲得的セルフ・ハンディキャッピング」があります。

主張的セルフ・ハンディキャッピング

これは上述の例のように、試験前に「全然勉強できなかった」「私、数学は苦手なんだよね」などと、うまくいかないことを予告し、その言い訳をあらかじめ公言することです。

獲得的セルフ・ハンディキャッピング

これは、試験前に勉強しないで部屋の掃除を始めるなど、わざわざ目標を達成できないような行動を取り、あとで「だからうまくいかなかったんだ」と言い訳できるような状況を、あらかじめ自ら作り上げることです。

獲得的セルフ・ハンディキャッピングの、より複雑なものとして、自分の能力から考えて絶対に不可能だろうということに、あえて挑戦するというものがあります。

ある実験で、子どもたちに輪投げをしてもらいました。その際、輪を投げる位置は、自分が自由に決めていいと指示しました。すると、ある子どもたちは、とんでもなく遠くから輪を投げたのです。それは、失敗することが分っていてわざとそうしたかのような行動でした。

主張的、獲得的、どちらのタイプも、失敗したとき「こういうハンディキャップがあったんだから、失敗しても仕方ないね」と、自分自身や周りの人たちに認めてもらえるような言い訳を、あらかじめ用意しておくという点では同じです。

セルフ・ハンディキャッピングの功罪

メリット

目標をうまく達成できなかったとき(たとえばカラオケで高い点数を出せなかったとか、試験で良い成績を出せなかったとか)、あらかじめ言い訳を用意しておけば精神的なダメージが少なくて済みます。

上述の輪投げの実験で、どう考えても不可能だという距離から輪を投げた子どもたちは、失敗して当然なのですから、自分の失敗を気に病む必要はありません。

一方、もし成功したらどうでしょうか。そんな「ハンディキャップ」を抱えているにもかかわらず成功したのですから、回りの人たちからの賞賛を受けることができますし、自分も自己賞賛できます。

すなわち、成功しても失敗しても、どちらに転んでも自分にメリットがあるということです。ですから、自分に自信がない人ほど、セルフ・ハンディキャッピングを使う傾向があると言われています。

デメリット

セルフ・ハンディキャッピングをする人としない人とを比較した研究によると、セルフ・ハンディキャッピングをする人は、そうでない人に比べて、成功する確率が低くなるという結果が出ています。それは、成功するためではなく、失敗することを前提として無意識に行動してしまうからです。

セルフ・ハンディキャッピングの克服法

セルフ・ハンディキャッピングの罠に陥らないために、次のことを心がけ、また大切な子どもたちにも教えてあげましょう。

これらの習慣を身につけることができたら、目標達成率、成功率は格段にアップします。

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