ちょっと何言ってるか分かんないす

スクールソーシャルワーカーだより スクールソーシャルワーカーだより

2018年5月号

今後は、AI(人工知能)に仕事を奪われる時代になっていくそうです。それでも子どもたちをAIができない分野で働くことができる大人にするには、どんな能力を身につけさせればよいのでしょうか。今日はそんなお話しをさせていただきます。

伝わらなかった指示

最近、SNSに投稿されたこんな記事で盛り上がりました。

さっき吉野家で隣にリーマン風の先輩後輩がいたんだけど、先輩が「お前さあ、『ちょっと何言ってるか分からないです』って先方にメールしとけって確かに言ったけど、そのまま書いて送るやつがあるかよ」って説教してて、腹筋が死にそうでした。

後輩の、自分で考える力が弱いところも気になりますが、その一方で、先輩の説明の仕方もちょっと不親切でしたね。

AIに仕事を奪われる時代

ところで、先日、予備校講師の林修先生と、青山学院大学陸上競技部の原晋監督が出演なさったテレビ番組を見ました。

AI(人工知能)についての話題が語られていましたが、最近のAI技術の進歩はめざましく、NHKではAIのアナウンサーにニュースを読ませる番組が登場していますし、自動車の無人運転も(アメリカで不幸な事故がありましたが)、実現に向けて着々と試験が積み重ねられています。今後も、社会のありとあらゆるところで、AIを搭載した機械やソフトウェアが生活を便利にしていくことでしょう。

この番組でお二人が共通して指摘していたのは、「これからの時代は、AIに人間が仕事をどんどん奪われていく」ということです。19世紀の産業革命で、人間が手動で行なっていた仕事を、機械がどんどん奪っていったのと同じです。

しかし、機械化された工場は、同じ品質の製品を大量に作ることは得意ですが、唯一無二の「作品」を作ることはできませんし、緻密な作業も苦手です。ですから、オートメーションの時代になっても、熟練工によるいわゆる匠の技が不要になることがありませんでした。

AIが人間の仕事を奪っていく流れは変えられないとしても、AIが不得意な能力を身につけておくならば、そう簡単に仕事を失うことはありません。未来を担う子どもたちにも、そんな能力を身につけさせたいですね。

では、AIが苦手なこととは何でしょうか。林先生は「読解力」、原監督は「コミュニケーション能力」だと指摘しておられます。先ほど挙げた先輩後輩が、もう少し身につけておきたい能力です。

足が痛い選手に求めた行動

別の番組で原監督が学生たちにどんな指導をしておられるか紹介していました。

足に痛みを感じる学生が原監督のところに来て、「足が痛いんですが……」と言いました。しかし、こういう言い方を原監督は認めません。

必ず、「だから、今日の走り込み練習は休み、上半身の筋トレに切り替えたいのですが、いいでしょうか」というふうに、自分の頭で考え、目標と計画を立て、それを相手に伝えることを求めます。

それこそ、AIではできないことです。原監督は、単に走るのが速くなればいいというのではなく、将来社会に出て通用する人材を育てたいのだとおっしゃいます。

どうやって読解力やコミュニケーション能力身につけるか

では、どうしたら子どもたちにそんな能力を身につけさせることができるでしょうか。

手っ取り早いのは、本を読ませることです。今は、スマホやタブレットなどでも本を読めますが、できれば紙媒体の方がいいです。研究の結果、モニターごしで読むと、紙媒体で読むより頭に入りにくいことが分かっています。

お子さんが小さいうちは、たくさん絵本を読み聞かせてあげましょう。小中学生のお子さんの場合には、保護者の皆さんが同じ本を読み、感想や意見を話し合うといいでしょう。何より、保護者の皆さんが、お子さんの前で、本を読んでいる姿をよく見せることです。

してみせる

読解力、コミュニケーション能力を身につけろといくら言っても、子どもたちはどうやったら身につけることができるか分かりません。実際に体験してみることが一番の学習になります。そこで、私たち周りの大人が、子どもたちに対して伝わるコミュニケーションを実践することが大事です。

自分の経験や価値観のフィルターを通して聞いていると、子どもたちが本当に伝えたいと思っていることを聞き逃し、しかも分かった気になってしまうことがよくあります。ですから、忙しいでしょうが、よく子どもたちの話に耳を傾けること。「分かった気にならない」のが秘訣です。

そして、次に「伝わったはずだと思わない」ことが秘訣です。あるセミナーでこんな指導を受けました。

講師
講師

人は、あなたの話をなかなか聞こうとしないし、聞いてもなかなか理解しないし、理解してもなかなか行動しない。
だから、そういうもんだと覚悟して、
『じゃあ、どういう伝え方をしたら聞いてもらえるだろうか、分かってもらえるだろうか、行動する気になってもらえるだろうか』
と考えなさい。

皆さんも心がけてみてください。

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