【中途半端な数字】お願いや指示の仕方

スクールソーシャルワーカーだより スクールソーシャルワーカーだより

2013年11月号

一般的に、「中途半端」というのは良くないもののようにとらえられていますね。しかし、お願いや指示の中で使うと、非常に効果的だというお話です。

遅刻防止策

あるディサービスが、困った問題を抱えていました。

利用者のお年寄りを、マイクロバスでピックアップしながら施設にお連れするのですが、それぞれの利用者さんたちが、決められた時刻に待ち合わせ場所に現れません。そのため、バスが予定通りに発車できず、結局後の方の待ち合わせ場所には遅れて到着することになります。そこで、施設に「いつもバスが遅れて来る」とクレームが行くのです。

もちろん、集合時間を守るよう利用者さんたちにお願いしているのですが、いくらお願いしても遅刻が改まりません。

施設長が知り合いの心理学者に相談すると、アメリカで行なわれた、こんな実験の話をしてくれました。

お金を無心する実験

道を歩いている見ず知らずの人に「お金をください」とお願いをすると、実際にくれた人は20%でした(日本だともっと少ないと思いますが、そこは文化的な違いです)。次に「13セント(15円くらい)ください」とお願いしてみると、何と50%の人がくれたのです。

これは、具体的な額を示されることで、相手は「これだけでいいのか」と一種の安心感を持ったためでしょう。しかもその額が10セントとか15セントとかいうぴったりの額ではなく、中途半端な金額だったために強く印象づけられ、「これはよっぽどの理由があるに違いない」と思ったためだと解釈されます。

人は、中途半端な数字を使われると、その数字を印象深く脳裏に焼き付けます。

この「中途半端な数字」の効果を遅刻問題にも活用してみようと、学者は施設長にアドバイスしたのでした。

具体的には、待ち合わせ時間を、わざと中途半端な時刻に設定します。たとえば、「10時半までに集合場所に来てください」ではなく、「10:27に来てください」というふうに。実際にやってみると、遅刻がほとんどなくなったそうです。

商売にも利用できる

この中途半端な数字の効果は、ビジネスの世界でも活用されています。ビジネスにおいて相手を説得したり広告宣伝を行なったりする場合、数字を用いることで説得力を増進させることができます。その数字を、あえて中途半端にするのです。

3,000円の商品を値引き販売する場合、2,000円に値下げするよりも、1,980円に値下げした方がさらに20円お得だというのは、誰が見ても分かります。しかし、ここで問題になるのが、消費者の受ける印象です。「3,000円の商品が2,000円になりました」という事実に対して消費者が感じる「お得感」と、「3,000円の商品が1,980円になりました」という事実に対する「お得感」を比べると、そこには20円という数字以上の差が感じられるのです。

「いちきゅっぱ」という中途半端な数字のお陰で、その数字がより印象深く消費者の心を掴み、「これはお得だわ。買わなきゃ損!」という気持ちにさせるのでしょう。

そのためどうせ値下げ販売をするなら、20円を惜しんで2,000円で売るよりも、1,980円で売った方が結果的にたくさん売れて利益が上がったりします。ですから、スーパーに行くと「98」とか「48」とかいう半端な数字があちこちに見られるのです。

以前見かけたダイエット商品には、「21日間で13キロのダイエットに成功!」というキャッチフレーズがついていました。「30日で20キロ」と言われるよりも、なんだか信憑性が増す感じがしますし興味も引かれると思いませんか?

子育てにも「中途半端」を活用してみよう

朝起きる時間や就寝時間、宿題を始める時間や終わる時間、食事の時間やお風呂の時間、1日にやっていいゲームの時間など、子育て、しつけには時間や数字がつきものです。特に工夫しなくても守れるお子さんの場合には、ぴったりの時間、ぴったりの数字でもかまいません。しかし、なかなか守れないお子さんの場合には、あえて中途半端な数字にしてみるのはどうでしょうか。

自分育てにも

そして、自分自身が目標や計画を立てる場合にも、あえて中途半端な数字で数値目標や達成期間を設定してみるのもおもしろいかもしれません。「11:07まで掃除をしよう」とか、「今週は、このトピックに関する本を4冊読もう」とか、「12月13日までに、3.7キロやせよう」とか。

効果があったら、ぜひお知らせくださいね。

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