嫌な目にあったときの対処法

スクールソーシャルワーカーだより スクールソーシャルワーカーだより

2013年9月号

子どもたちにはできるだけ嫌な目、苦しい目にあって欲しくないと私たちは願います。しかし、現実には人から嫌なことを言われたり、されたり、つらい状況に置かれたりするものです。そんな場合でもハッピーでいられるための秘訣を教えてあげられたら素晴らしいですね。今回はそのためのヒントをお伝えします。

聖パトリックの日の出来事

Facebookの最高執行責任者であるシェリル・サンドバーグさんは、ご自身の経験を元に、女性の社会進出についての本を書いておられます。今年7月、日本で講演するために来日なさったシェリルさんが、NHKのインタビューに答えておられた番組を観ました。

アメリカでは、男女平等の意識や女性の社会進出が日本よりはるかに進んでいます。それでも結婚して子どもまでいる女性が社会で働くには、様々なプレッシャーと戦う必要があるといいます。そして、シェリルさんの中にも、ある種の罪責感があったそうです。自分は家庭人としても企業人としても不十分、家庭も仕事も中途半端だという罪責感です。

アメリカで3月17日は聖パトリックの祝日です。この日には、子どもたちはみんな緑の服を着る風習があります。ところが毎日の忙しさの中で、シェリルさんはついうっかりと、小学生の息子に青い服を着せて学校に送り出してしまいました。

「なんて自分はひどい母親なんだろう。みんなと違う服を着て登校した息子は、どんなに恥ずかしい思いをすることだろう」と落ち込み、混乱したシェリルさんは、半泣きになってご主人に電話をしました。すると、ご主人がこう言いました。「シェリル、心配しなくていい。あの子は今日、『みんなと同じでなくてもいいんだ』ということを学んだんだよ」。帰ってきた息子さんも、にっこり笑って言いました。「僕は青が好きだから、全然気にしなかったよ!」

一本足

9月に郡山にいらっしゃるゴスペルシンガーのレーナ・マリアさんは、生まれつき両腕がなく、左脚も右脚の半分の長さしかありません。にもかかわらず、足を器用に使って家事や車の運転をこなします。そして何より底抜けに明るく前向きな人格に、日本でもたくさんのファンがいます。

小学生のときにクラス対抗の水泳大会があり、レーナさんもリレーの選手として出場しました。実はレーナさんは幼い頃から水泳を習い、後にソウルのパラリンピックにスウェーデン代表として出場したほどの名アスリートです。それを知らない他のクラスの子たちは、障がい者が相手だから楽勝だと高をくくっていました。それなのに、レーナさんの大活躍によって彼女のクラスがぶっちぎりの優勝をさらってしまいます。

よほど悔しかったのでしょう、他のクラスの男の子の一人が、水から上がってきたレーナさんに嫌みを言いました。「よう、がんばったな、一本足」。一瞬、回りの子たちが凍り付きました。なんてひどいことを言うんだろう! ところが、レーナさん本人はちっとも意に介さず、それどころか満面の笑みを浮かべて言いました。「ありがとう、二本足!

後にレーナさんはこう語っています。あの「ありがとう、二本足」という言葉は、別に「嫌みなんかに負けるもんか」という対抗心から出たものではなく、あのときは本当にうれしくて感謝したんだと。

ご両親は、彼女のことを障がい者のレーナではなく、大切な娘のレーナとして育てました。障がいを持って生まれたレーナさんと初めて対面したときのお二人の最初の言葉は、「まあ、なんてかわいい子なの!」だそうです。そして、いつも「あなたは私たちの宝物。この体は神さまからあなたへの最高のプレゼント」と言い続けました。

だから一本足という言葉が、まさか自分を馬鹿にして出た言葉だとは思いもしなかったというのです。

受け取り方、考え方を変えてみる

私たちは、人の言動や、回りに起こってくる状況によって、落ち込んだり、腹が立ったり、悲しくなったりすることがあります。しかし、同じ事実を体験しても、受け取り方、考え方を変えてみると、別の感じ方をすることがあります。

シェリルさんのご主人や息子さん、あるいはレーナさんやそのご両親のようなとらえ方、受け止め方ができるなら、私たちの毎日はもっともっと喜びや感動に満ちあふれるのかもしれません。また、そういう受け止め方は、本人だけでなく周りの人をも励まします。

大切な子どもたちがそういう幸せな人生を送ることができるようになるために、モデルである私たち大人が、自分やお子さんに起こった出来事を前向きに、肯定的に、建設的に、積極的に受け止めたり考えたりできるといいですね。

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