2010年7月号
「うちの子、こういう性格で……。何とかならないでしょうか」という相談を時々受けます。あるいは、「自分の性格を変えたいんだけれど、何とかならないか」という相談を。はい。何とかなりますよ。今日は、そんな話です。
性格とは?
そもそも、性格って何でしょうか。学問的にはいろいろな説明の仕方があるのでしょうが、ここでは「日常生活に役に立つ」という視点で解説します。
その視点で言うと、性格とは「その人の行動パターンにつけたレッテル」のことです。
たとえば、「優柔不断」という性格について考えてみましょう。どうしてその人は他人から「優柔不断な性格だ」と言われたり、自分自身でそう思ったりするのでしょうか。それは、「決断するのに時間をかけることが多いと思われている」からです。
「決断するのに時間をかける」という行動パターンに対して、「優柔不断」というレッテルを貼る。それが「優柔不断という性格」です。
レッテル以外の行動パターンもある
ここで、「そう思われている」というところがポイントです。そう思われているだけで、実際は違うかもしれません。実際、優柔不断と言われる人でも、よく考えないですぐに決断することの方が多いはずです。
私は、自他共に認める優柔不断な人間ですが、今日履いた靴下は即時に決めました。どの靴下を履くかで悩むことの方がまれです。そう考えると、私は決断力・行動力のある人間なのかも知れませんね。
それにも関わらず、私は自分のことを優柔不断だと思っています。それは、私にとって重要な場面で、あれこれ思い悩み、決断を下すのに時間がかかることが多いと、私がそう感じているからです。
私という人間が優柔不断な性格だというのは、私が自分の行動パターンを見て、自分の視点や価値観で勝手に「優柔不断」というレッテルを貼ったに過ぎません。もしも、靴下を考えないで選べるという行動パターンに注目するならば、私は「決断力がある性格」ということになるはずです。
レッテルは一面しか表していない
性格は行動パターンにつけられたレッテルだと言いました。そして、そのレッテルというのは、その人の行動パターンの一面しか表していません。
たとえば、短気な性格だと思われている人でも、24時間怒ってばかりいるわけでなく、穏やかに過ごしている時間の方が多いはずです。嘘つきだと言われている人でも、本当のことを言っていることの方が多いはずです。性格とはレッテルです。レッテルを貼る人にとって重要な場面で、怒ったり嘘をついたりすることが多いので、短気だとか嘘つきだとかいう性格にされてしまうわけです。
これを読んでおられるあなたや、あなたの大切なお子さんは、どんな性格でしょうか? しかし、あなたや他の人たちが思っている性格とは全く違う可能性も、現実に持っておられるということを知ってください。無い? 嘘です。無いというのは、無いと決めつけているからです。必ずあります。
スポットライト効果
デビューしたての頃はあまりパッとしなかった歌手や俳優でも、テレビに出ているうちにどんどん魅力的になっていきますね。それは、みんなに注目されるからです。注目され、スポットライトを浴びると、どんどん「スポットライトを浴びるのにふさわしい歌手や俳優」に育っていくのです。
性格もこれと同じです。
「この人はこういう性格だ」とレッテルを貼ることで、これまで見過ごしにされてきた行動パターンがあります。私は、「私は優柔不断だ」と言うことで、自分の中にある決断力や行動力を無視してきました。しかし、もしも自分の中の決断力や行動力を認め、それに注目するなら、そういう望ましい部分は、スポットライトを浴び続ける歌手や俳優のようにだんだんと「主役の顔」になっていきます。
スポットライト効果の応用
たとえば、お子さんの行動が遅くて困っておられるなら、「あなたはグズだ。もっと早く行動できないのか」と責めるのはやめましょう。だって、そう言っても早く行動できなかったわけですからね。効果のない指導はやめましょう。むしろ、「あなたはグズだ」と宣言し続けることでスポットライト効果が働き、お子さんはますますグズになります。
ですから代わりに、普通にできたことを見つけて(捜せば必ずあるはずですよ)、優しく「早くできたね」と指摘してあげてください。そうすれば、スポットライト効果で素早く行動できる場面が増えていくでしょう。
自分自身に対しても
自分自身に対しても同じです。自分はこういう性格だと思っておられるのとは全く逆の性格を思い浮かべてください。そして、「私はこういう性格だ」とその逆の性格を自分に向かって宣言しましょう。何度も何度も。そうすれば、スポットライト効果で、その逆の行動パターンも育ちます。
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