2009年12月号
前回の続きで、子どもが「自分は大切にされている」と感じられるような話の聴き方について書かせていただきます。
黙る
第一のポイントは、子どもの話を「黙って」聴くこと。簡単なようですが、これが難しい。私たち大人は、ついつい子どもの話の腰を折って、口を挟みたくなります。「それは違うんじゃない?」と否定したり、「そんな甘い考えは通用しないよ」と説教したり、「お父さんが学生の時にはなぁ」と、子どもの話を材料にして自分の話を始めたり……。
しかし、子どもは、教えてもらいたいのではなくて、話を聴いてもらいたいのです。だから、こちらが言いたいことは後回しにして、ひとまず口を閉じ、じっと子どもの話に耳を傾けましょう。そうでないと、成長してから何も話をしてくれなくなります。「この人に話しても、どうせ聴いちゃくれないんだもの」と見切りをつけられてしまいますから。
ただ、現在たとえそうなっていたとしても、大丈夫。お子さんがたまにぽつりぽつりと話をしたとき、黙って最後まで耳を傾けてみてください。必ず信頼を回復することができます。
「聴いているよ」というサイン
黙って聴くと言っても、ただそれだけだと、子どもは「本当に聴いてくれているの?」と不安になります。ですから、「ちゃんと聴いているよ」というサインは出してあげましょう。サインの出し方はいくつもありますが、今回は3つお話しします。
1.アイコンタクト
相手を見ながら話を聴く、ということですね。簡単なようですが、多くの大人は、意外とこれができていません。
小学生に対するアンケートで、「お母さんに望むこと」という項目のトップには、「『お母さん』と呼んだときに、『なぁに』と振り向いて返事をして欲しい」という回答が上がりました。男性もうかうかしていられません。夫に対する妻の不満の上位に「新聞越しに話を聞かれるのがイヤ」というのが上がっているのですから。
見るといっても、「にらむ」のとは違います。「責めたり馬鹿にしたりしないから、どうぞ安心して何でも話して」という思いを込めて、優しい視線を送りながら聴いてくださいね。
2.うなずき
体全体でうなずきながら聴きましょう。すると、「否定されていない。ちゃんと聴いてもらっている」と感じてもらいやすくなります。
また、アイコンタクトが大事だからと言って、じーっと見つめ続けられるのも緊張します。しかし、しっかりとうなずきながら話を聴いてあげると、適度に視線が外れるので、緊張感がほぐれます。
3.相づち
何か声を出しながら聴くということです。「ふーん」「へー」「ほほぅ」「そうなんだ」「なるほどねー」「そっかぁ」「ええ」「うん」「ふむふむ」など、それ自体は意味がないけれど、「聴いているよ」という意味が伝わるような言葉を発しながら聴くのです。
また、「それから?」「それで?」「もっと話して?」「もう少し詳しく聴かせて?」など、話を促すような言葉も、適宜挟んでいきましょう。
「黙って聴こう」は、同意とは違う
手前味噌ですが……。
私には大学生と高校生の娘がいます。同年代の娘を持つお父さんたちには、よく「信じられない」と言われるのですが、我が娘たちは、私が側に寄っても嫌がりませんし、私の話、それがたとえ耳の痛い話でも、ちゃんと耳を傾けて応答してくれます。それは、私も彼女たちの話を、小さいときからじっくりと傾聴してきたからだと思っています。
「黙って聴こう」というのは、子どもを教えたり、しつけたりしてはいけないという意味ではありません。子どもの言い分を全部認めるとか、子どもの言いなりになるということでもありません。しつけていいのです。教えていいのです。
しかし、子どもにあなたの大切な教えの言葉を聞いてもらうためには、まずあなたが子どもの話に耳を傾けなければなりません。あなたがしゃべるのは、それからです。
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