2009年9月号
前回に引き続き、「叱責」をテーマにお話しいたします。叱責は鬱憤晴らしではなく、あくまでも教育的な行動のはずです。叱責が本当に教育的効果を上げるためのポイントを紹介します。
行動を問題にする
子どもや部下を叱るときには、行動を問題にしましょう。
逆に言うと、その人の内面、たとえばやる気がないとか、いい加減な性格だとか、気が利かないとかいうような指摘の仕方をしてはいけないということです。
それは、相手が人格攻撃をされたと感じるからです。すなわち、「あなたはダメ人間だ」と言われたような気になるのです。人格攻撃をされたと感じた人は、傷つかないように心を閉ざします。もし心をガードされたら指導になりません。ただお互いにいやな時間を過ごすだけです。
そこで、内面ではなく行動を問題にし、どういう行動を取って欲しいかを具体的に伝えるようにしましょう。人が成長するというのは、行動が変わるということです。行動を問題にするのは、人格攻撃を避けるとともに、相手の成長を促すためでもあります。
たとえば、選手が集合するときに「だらだらするな! やる気あんのか!」と怒鳴っていた運動部の監督さん。効果的な対応法を学ばれて、こんなふうに指導するようになりました。「集合するときは、走って集合しよう。そうすると、チーム全体の士気が上がって、練習効果も上がるし、実力も発揮できるから」。
短時間で終わらせる
叱責は、できるだけ短い時間で終わらせることが大切です。ご自分が叱られた時のことを思い出されればお分かりだと思いますが、長時間の叱責に耐えられるほど、私たち人間の忍耐力・集中力は強くありません。
また、長時間叱っていると、自分の怒鳴り声に刺激されて、だんだん感情がヒートアップしていき、やがて「叱る」が「怒る」になってしまいがちです。それでは指導効果がありません。
そもそも、長時間かかるということは、叱っている本人も何が言いたいのかが分かっていない証拠です。こちらに分からないことが、相手に伝わるはずがありませんね。
短時間で、しかも効果的な叱責指導ができるようになるために、相手と話す前に、あらかじめ指導のポイントを紙に書き出すことをおすすめします。
- 相手のどんな行動が問題なのか。
- なぜ問題なのか。
- これからどういう行動を取ってもらいたいか。
- それをするとどういういいことがあるか。
これらを書き出してみましょう。書けないなら、自分でも分かっていないということですから、まだ叱ってはいけません。叱責は指導の一環です。指導である以上、教師が授業の指導案を作成するように、計画を立てなければならないのです。
感情をうまく使う
叱責するとき、感情的に怒鳴りつけるのは効果がありませんが、人間は機械ではなく感情の動物ですから、感情を上手に利用することは大切です。具体的には次のような関わり方をします。
これまでお話ししたとおり、相手の問題行動を指摘し、それがなぜ問題なのかを短く伝えます(上の、指導の4つのポイントの1と2です)。
- 「期待していただけに、相手の行動にがっかりした(悲しかった、悔しかった)」ということを伝えましょう。
- 3秒程度相手の目を見つめながら黙ります。これは、相手にもこちらのつらい気持ちを味わってもらうためです。こちらの気持ちを、じんわりと伝える「間」を取りましょう。
- これからどういう行動を取って欲しいかを伝え、そうしてもらったら、お互いにとってどんなに良いことが起きるかを伝えます(指導の4つのポイントの3と4)。
- 「あなたのことを期待している」とか、「愛している」というような肯定的な気持ちを伝えましょう。セクハラにならなければ、相手の肩や背中に軽く触れてもいいし、家族の場合にはぎゅっと抱きしめてもいいでしょう。これは、期待し、愛しているからこそ叱責するのであって、相手そのものを拒否しているわけではないということを伝えるためです。
前回の「SSWだより」で、私が長女を叱った例と見比べてみてください。
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