片付けが苦手なADHDや愛着障害の子への対応

スクールソーシャルワーカーだより スクールソーシャルワーカーだより

2023年4月号

片付けがうまくない子ども(や大人)はADHD愛着障がい型の2つの種類に分けられます。単にしつけられていないという子どももいますが、ADHDや愛着障がいの場合、単なるしつけではなかなか片付けられるようになりません。それぞれの型に対する対処法を紹介します。

片付けが苦手な子

ある精神科医の講演で、ADHDの子や愛着障がいの子が片付けを苦手としている原因について聞きました。

ADHDとは

ADHDは病気ではありません。他の多くの子どもたちと脳の特性の違いが大きいために、社会の中で色々な生きづらさを抱える「発達障がい」の一種です。集中力が続きにくいタイプと、じっとするのが苦手で衝動的に行動するタイプ、あるいはその両方の特徴を併せ持つタイプがあります。早いうちに適切な治療や訓練を受けないと、集中できないため学習が遅れたり、大怪我をしたり対人トラブルを起こしたりして、二次的な問題を抱える危険があります。

講演によると、ADHDの子は「片付けなければならない」という思いは持っているそうです。しかし、特性として行動の「分解」と「再構成」がとても苦手です。

たとえば「引き出しの片付け」という行動は、

  1. 中身を全部出す
  2. 1つ1つの置き場所を決める
  3. ものを手に取る
  4. 決めた場所にそれを入れる

など、様々な小さな行動からなっています。そして、それらを順番通り実行して初めて「引き出しの片付け」ができるのです。

ADHDの子はそういった分解・再構成の作業を自分一人でやるのが苦手です。そこで、ただ「引き出しを片付けなさい」と指示されただけでは、どうしたら片付けられるか分かりません。そこでどんなに指示されても片付けることができません。

ですから、周りの大人が行動の「分解」を一緒にしてやり、順番通り1つ1つ指示をしてやれば、そのうち分解と再構成に慣れてきて自分でできるようになります。この対処法は、ADHDの子だけでなくどんな子どもでも有効です。

愛着障がいとは

「愛着」とは、不安やストレスが生じたとき、他の人と触れ合ったり交流したりすることによって安心感を得ようとすることです。愛着障がいは、幼少期に周りの大人との愛着を十分体験させてもらえなかったなどの原因で、大きくなってからも他者とうまく愛着を持てなくなってしまっている状態です。

愛着障がいの人は、いつも不安感や恐怖心にさいなまれたり、他の人とうまく距離感を保てず、孤立したり逆に異常にベタベタしすぎたりします。あるいは人によって態度をコロコロ変えたり、相手の愛情を試すように迷惑行為を繰り返したりすることもあります。

講演によれば、片付けが苦手な愛着障がいの子は、小さいときにほめられたり認められたりした経験が乏しいため、「片付けたらいい気持ち」という体験をしたことがほとんどありません。そこで、ADHDの子と違ってそもそも「片付けなければならない」という思いを持っていないそうです。ですから、「片付けたらいい気持ち」という体験を繰り返し味わってもらう必要があります。

まず、大人がその子と一緒に片付けをしてあげます。その際は、大人が「まったくもう!」という不機嫌な態度を見せてはいけません。「一緒に片付けるのが楽しい!」という雰囲気を醸し出しましょう。そして、一つ一つ片付けながら、「そうそう!」「うまい!」「ちゃんと置けたね!」と承認のメッセージを送ります。

片付けが完了したら、「片付いて気持ちがいいねぇ!」「ほら、片付いていると探しものがすぐに見つかって、うれしいね!」と喜びを共有します。このようにして、「やるべきことをやったら気持ちいい!」という体験を繰り返し繰り返し味わってもらうのです。

この方法も、愛着障害の子だけでなくどの子どもにも有効です。ぜひ実践してみてください。

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