2025年5月号
子どもたちに何かをしてほしいとき、あるいはやめてほしいとき、どんな伝え方をしたらよいか。今回はそんなお話をいたします。
事故を激減させた看板
バイクの事故が多発する道路がありました。風光明媚な湖畔のカーブが連続する場所で、バイカーたちはついついスピードを出しすぎて、カーブを曲がりきれずに事故を起こしてしまうのです。「スピード出すな」「事故発生多発箇所」といった看板も功を奏しません。

ところが、ある看板を立てたところ、事故が劇的に減少しました。それは……
「ここで事故を起こして怪我をすると、病院に収容されるまで2時間かかります」
分かっちゃいるけどやめられないの嘘
私が心理学を学んだ師匠に、次のような指導を受けたことがあります。「分かっているのにできない。分かっているけどやめられないと言うけれど、それは嘘だ。本当に分かっていたらできるはず。分かっていないからできないんだよ」。
分かっていない。たとえば、どうしてそれをしなければならないか(やめなければならないか)が分かっていないから、本気で取り組まない。あるいは、方法が分かっていないからできない。それなのに「分かっているんだけれど」なんて言っているから、いつまでたってもできないし、やめられないんだよ、と。
指導の3つのポイント
子どもでも部下でも後輩でも、相手の不適切な行動を「指導」する場合には、以下の3つのポイントがしっかりと相手に伝わることが大切です。
- 相手のどんな「行動」が問題なのか
- どうしてその行動が問題なのか(理由)
- 代わりにどのような行動をして欲しいか(代替え行動)
特に、2つ目の「理由」に注目してみましょう。今の良くない行動は伝えた。して欲しい行動も伝えた。それでも相手が行動を改めないとしたら、これまでの行動を改め、新たな行動をしなければならない理由が十分伝わっていないのかもしれません。
逆に、そうすべき理由、やめるべき理由がしっかり伝わったなら、相手の行動が変わる可能性が高まります。

自宅学習しない子のケース
Aくんは中学2年生ですが、自宅での学習をほとんどしませんでした。学校の先生はもちろん、ご両親も勉強するよう促すのですが、ついつい漫画やゲームに手が伸びてしまうのです。
あるとき、お父さんがAくんの部屋に入ってきて言いました。「君はサッカーが強いあの高校に入って、高校でもサッカーを続けたいと思っているんだよね?」 それにうなずいたA君にお父さんは続けて尋ねました。「では、今のような勉強の仕方を続けていて、あの高校に合格できると思うかい? そして、合格したとして授業について行けると思うかい?」
しばらく考えた後、Aくんは「思わない」と答えました。するとお父さんは短く言いました「お父さんもそう思うよ」。そして、それ以上何も言わずに部屋を出て行きました。
その日から、Aくんは少しずつ予習復習や宿題に取り組むようになっていきました。そして、見事志望校に合格するのです。
理由を伝えよう
なかなか相手が変わらないなと感じたときは、上記の3つのポイント、特に理由がうまく伝わっているかチェックしてみましょう。そして、伝え直しましょう。Aくんのケースのように、一方的に伝える代わりに「今のままその行動を続けたらどうなるか」を考えさせるのも良い方法です。
→ バックナンバー一覧へ → トップページへ
コメント コメントありがとうございます!