AI時代を生き抜くために、家庭で育てたい力

スクールソーシャルワーカーだより スクールソーシャルワーカーだより

2025年12月号

アメリカの雇用動向を見ると、プログラマーやシステムエンジニア、クリエイティブ職、士業といった、いわゆるホワイトカラーの人たちのリストラが相次いでいます。また、若者の新規雇用も低下傾向にあります。AIが彼らの仕事を代わりに行うようになったためです。

今後、日本でも同様の現象が起こってくるでしょう。そんなことを言うと、「うちの子、将来AIに仕事を奪われてしまうのでは?」と不安になるかもしれません。

しかし、ご心配なく。「AIに負けない力」を育てていけば問題ありません。では、その力とは何で、どう育てればよいのでしょうか?

ロボット的な人間を育てていませんか?

言われたことを正確にこなす」「大量の情報を暗記する」「ミスをせずに計算する」「親や先生の指示通りに動く」……かつて、これらは「優秀な人材」の条件でした。しかし、今や正確さ・スピード・知識量において、人間がAIに勝つことは不可能に近いと言っていいでしょう。

もし、私たちが子どもに対して、「言われた通りにしなさい!」「間違えちゃダメ!」と、ロボットのような正確さと従順さばかりを求めているとしたら、それは「AIが代わりにやれる能力」ばかり育てていることになりかねないのです。

「人間臭さ」と「決断力」こそこれから求められる価値

では、AIには絶対にできなくて、人間だけができることとは何でしょうか?

AIは論理的で効率的な答えを出すことはできますが、「相手の気持ちを察して、言葉にならない思いを汲み取る」ことはできません。また、「誰かのために何かをしてあげたい」という愛情に基づいた行動や、正解がない課題にぶつかったとき、それでも何かしら決断を下す力もAIは持ち合わせていません。

トラブルが起きたときにチームの空気を和ませたり、落ち込んでいる同僚に適切な言葉をかけたり、顧客の潜在的なニーズを感情レベルで理解したりする。そして、どう行動すべきか判断して実行する。こういった「人間臭いコミュニケーション」と「決断力」こそが、AIに取って代わられない唯一無二の価値になります。

今日からできる!「非効率」な会話のすすめ

では、家庭で具体的に何をすればよいのでしょうか? 答えはシンプルです。「正論や指示出しを減らして、共感的な会話を増やす」ことです。

普段、お子さんとこんな会話になっていませんか?

子ども
子ども

ただいまー、疲れたー

親

くだらない愚痴をこぼしている暇があったら、早く宿題しなさい!
さっさと着替えて!

これは「効率」を求めた会話です。指示・命令は簡単でスピーディーですが、心は通いません。 少しだけ「非効率」な会話にしてみましょう。

子ども
子ども

ただいまー、疲れたー

親

おかえり。
今日は疲れたんだね。
何か大変なことでもあった?

子ども
子ども

うん、体育で走らされてさ…

親

そっかぁ、それはクタクタになるね。
頑張ったんだね

「宿題をしなさい」という指示の代わりに、自分の気持ちを受け止められた子どもは、「分かってもらった」という安心感を得ます。さらに、最後まで話を聴いてもらえると、子どもの自己肯定感も育ちます。

安心感と自己肯定感で心が満たされた子どもは、不思議と「さて、やるか」と自分から動き出すものです。そして、他の人の気持ちに深く共感する力や愛情も育ちます。

逆に、常に監視され指示ばかりされていると、子どもは「叱られないためにやる」ようになります。これでは自主性は育ちませんし、監視されないと手を抜くようになります。

また、困難にぶつかったとき、「誰からも指示がないから動けない」という状態になってしまうでしょう。そして、他の人の気持ちに寄り添う力もなかなか育ちません。

家庭での何気ないおしゃべり

「自分の気持ちを言語化でき、他者に伝えられる人」になるための練習の場が、家庭での何気ないおしゃべりです。「今日は空がきれいだったね。」「あのテレビ面白かったね。」 そんな、一見生産性のない非効率な会話を通して、AIには真似できない「共感力」や「決断力」を育ててください。

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