メタ認知の育て方

スクールソーシャルワーカーだより スクールソーシャルワーカーだより

2019年11月号

最近教育界で「メタ認知」と呼ばれる能力が注目されています。メタ認知とは何でしょうか。そして、どうやって育てたらいいのでしょうか。

メタ認知とは

心理学や脳科学で言う「認知」とは、人間が五感(視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚)を使って外界のものを自分の中に取り入れたとき、過去の記憶と照らし合わせてそれが何か理解(判断・解釈・推理)したり、新たに記憶したりするような脳の働きのことです。

そして、「メタ」とは「高次の」という意味です。

ですから「メタ認知」とは、鳥が高いところから下界を見下ろして観察するように、人が自分自身の行動や思考や感情を客観的に観察して理解する能力を指します。

メタ認知能力が高い人の特性

メタ認知能力が高い人には、以下のような特性があると言われています。逆に言うと、メタ認知が十分育っていない子ども(や大人)は、以下のようなことが苦手だということです。

(1) 主観と客観を区別できる

これが客観的事実なのか、それとも事実を見聞きして自分で解釈したことなのかを分けて考えることができます。

たとえば、友だちに「昼休み、一緒に遊ぼう?」と言ったら「今日は○○ちゃんと約束したから、また明日ね」と返されたとします(客観的事実)。それに対して「あの子に嫌われた」とか「仲間はずれにされた」というのは主観的な解釈です。

客観的事実と主観的解釈を区別できる人は、変に傷ついたり、落ち込んだり、やる気を失ったりしづらく、前向きに物事に取り組むことができます。

(2) 自分の長所・短所を理解できる

自分が得意なことと不得意なことを知っていれば、それに応じて行動できます。また、どんな学校に進学するかとか、どんな仕事を目指すかということも客観的に判断できます。

(3) 自分や他人の行動の意図を把握できる

自分がなぜその行動を取ったのか(あるいは取ろうとしているのか)をしっかりと理解し、それを人に説明することができますから、よけいな誤解を招く恐れが少なくなったり、協力を得られやすくなったりします。

また、そういう人は他の人の表面的な行動だけでなく、その行動の意図にも注目しようとしますから、人と協力して行動することがしやすくなります。

(4) 問題解決能力が高い

解決すべき問題についてよく分析し、自分が利用できる資源(自分自身の知識や能力、他の人や組織からの助けなど)を十分に把握し、問題の攻略法について知っていたり新たに仕入れたりできる力があるので、様々な問題にぶつかっても、それを解決することがしやすいです。

学校などでの学習も得意ですし、人間関係のトラブルにもうまく対処できます。

メタ認知能力の育て方

3つの問い

お子さんのメタ認知能力をぜひ育ててやりたいと思われますか? 家庭でも簡単にできる方法は、自分の行動や考えを振り返るための3つの問いを、折に触れて投げかけることです。その問いとは、

ただし、尋問口調で尋ねてしまうと、と子どもは責められているように感じて冷静に考えられなくなります。優しく笑顔で尋ねましょう。そして、お子さんが小学4、5年生くらいになれば、自分がした行為について、あるいはこれからしようと思っている行為について、これら3つの質問の答えを自分で紙の上に書き出す習慣を身につけてもらうといいでしょう。

答えではなく解き方に注目する

お子さんの宿題を見たり、戻ってきたテストの答案をチェックしたりするとき、回答や点数だけに注目してほめたり叱ったりするのではなく、本人がどのようにしてその回答を導き出したのかに注目したり、尋ねたりしてみましょう。

あるいは、どうやったら今後同じようなミスをしないで済むかを考えるよう誘導しましょう。

また、子どもに何か質問されたときは、答えをストレートに与えるのもいいですが、余裕があればどうしたらその情報を手に入れられるか一緒に考えてみましょう。

中国の格言に曰く。

魚を与えれば一日の飢えをしのげるが、魚の釣り方を教えれば一生の食を満たせる。

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