してみようという言い方

スクールソーシャルワーカーだより スクールソーシャルワーカーだより

2017年9月号

同じ事を表現するのにも、肯定的な言い方もできるし、否定的な言い方もできます。大事なのは、どちらの言い方の方が、効果があるかということです。

ピカチュウを追い出そう

ちょっとした実験をやってみましょう。今夏のポケモン映画は、さとしとピカチュウの出会いの場面を描いたものだったようですね。そこで、次の場面をイメージしてみてください。

さとしがピカチュウに不用意に触ろうとして、怒ったピカチュウの電撃を受けている姿。

次に、そのイメージを頭の中から消し去ってください。

さあ、さあ、さあ! できましたか? ほとんどの人は難しかったと思います。そのイメージを消し去ろうとすればするほど、ピカチュウの「ぴかー!」という叫びと共に、さとしの全身が電撃に包まれ、その後真っ黒になって煙を上げている姿が脳裏に染みついたのではないでしょうか。

では、次に、こんな場面を思い浮かべてみてください。

ドラえもんがどこでもドアに手を挟んで、絶叫している場面。

頭の中に、ドラえもんのものすごく痛そうな顔が浮かび、ダミ声で叫ぶ声が響きましたか? 痛そう!

しかし、あなたがドラえもんの痛がる姿を浮かべたその瞬間、ピカチュウとさとしはどこかに行ってしまったはずです。

相手が問題行動をする場合の対処

子どもでも、他の家族でも、部下でも、他の人が問題行動をしていて、それを改めて欲しいときがありますね。そんなときに、「○○するな」「○○はやめて欲しい」「○○されるのは嫌だ」という否定形の言い方、望ましくない行動を禁止するような言い方をしても別にかまいません。

しかし、「○○しようね」「○○して欲しい」「○○してもらえるとうれしいな」というような、肯定的な言い方、望ましい行動を促すような言い方の方が効果的な場合が多いようです。というのは、次のような理由によります。

しないのは難しい

何かをしない努力をすることはとても難しいことです。先ほどのピカチュウ実験ではありませんが、その行動を意識してしまい、かえってその行動に引き寄せられてしまうのです。

ですから、相手の問題行動を改めて欲しい場合には、その行動をしないよう求める代わりに、別の行動をすることをお願いしてみましょう。

責められるニュアンスが軽くなる

望ましくない行動を禁止するような言い方をされると、聞いた人はどうしても責められているような感覚になります。そうすると、自分を守るために、言い訳をしたり、聞こえないふりをしたり、反発したくなったりします。

ですから、相手の抵抗を軽くするためにも、望ましい行動を促すような言い方の方が効果的なのです。

何を求められているかが明確になる

「○○するな」という禁止は、結局「代わりにこういう望ましい行動をして欲しい」というメッセージの裏返しです。しかし、人はこちらが思っているような解釈をするとは限りません。

たとえば、親が子どもの今の行動に不満を表明しただけで、代わりにどうして欲しいかを伝えなかったとします。その子どもは親が嫌いなわけではありませんから、これ以上親に嫌な思いをさせずに済むよう、自分で考えた別の行動を取りました。

ところが、それも親の気に入らない行動でした。

こうなると、親の不満は解消されません。そして、子どもだってせっかく行動を改めたのにまた叱られるわけですから、こんなことが続けば親の気持ちに配慮しようという意欲自体を無くすことでしょう。

ですから、「これまでして欲しくないことしか言ってこなかったなあ」と気づかれた方は、して欲しいことを具体的に示してお願いする方法を試してみましょう。

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