2013年7月号
子どもにはコミュニケーション上手になってほしいと思いますね? そのためには周りの大人が良いモデルになることが大切。私たちは子どもにどんな伝え方をしているでしょうか。
さて、私の裏の顔は、キリスト教会の牧師です(強面のせいか、そうは見えないとよく言われますが)。結婚式でよくこんなお話をさせていただきます。
言葉で伝えよう
人が神さまに自分の願いや思いを伝えるのに、祈り、すなわち言葉で伝えようとし、神さまもご自身の愛や願いを、聖書、すなわち人間に分かる言葉で伝えようとなさいました。それと同じように、夫婦も自分の願いや考えや気持ちを、はっきりと言葉に出して伝えることが大事ですよ、と。
まあ、夫婦も長年やっていますと、「これぐらいのこと、言わなくても分かるでしょうよ」と思うこともあるのですが、これは甘えです。
たとえ面倒くさくても、自分が何を考え、何を感じているのか、何をして欲しくて、何をして欲しくないのかを、いちいち言葉に出して伝えることが夫婦円満にとって非常に重要です。
しかも、ふてくされた態度とか、嫌みとかのような変化球的な伝え方ではなく、ストレートに、誤解の余地のないほど明確に伝えることが必要。そして、相手を防御的にさせるとかえって聞いてもらえなくなりますから、できるだけ穏やかな言い方で伝える方が効果的です。
子どもたちのモデルに
最近、すぐにキレる若者(や大人)が増えてきたと言われます。それは、自分の気持ちや願いを、言葉に出して伝える能力が乏しいからです。
ちょうど、保育所や幼稚園に通っている幼児が、他の子が使っているおもちゃを力尽くで取り上げ、取り上げられた子も取った子を突き飛ばすようなもの。「遊びたいから、貸してね」とか「今は僕が遊んでいるから、後でね」とか言葉で伝えられないから、力に訴えたり泣きわめいたりするしかないわけですね。
幼児はともかく、中学校を卒業するような年齢に達しているにもかかわらず、なぜ言葉にして伝える能力が身についていないのでしょう。それは、そのように訓練されていないからです。
子どもたちは、私たち大人の語っていることではなく、行なっていることから多くを学びます。私たち大人が良いモデルとなり、自分の願いや気持ちや考えを、明確に、そして穏やかに言葉に出して伝え合っている姿を見せていれば、子どもたちは自然と「こうすれば、人間関係のトラブルがうまく解決するんだな」ということを学び、実践できるようになっていくことでしょう。
ご家族の間で、またお子さんに対して、明確で穏やかな伝え方をしていますか?
して欲しいことを伝えましょう
私たちが子どもたちを叱りたくなったり、嫌みを言いたくなったりするときは、その子が私たちの願い通りに行動していないときです。たとえば、帰宅したらすぐに宿題を済ませて欲しいのに、いきなりゲームを始めて、延々と続けるとか。
そんなときは、以下の4つのポイントを整理してみましょう。頭の中で考えるより、紙の上に書き出した方がいいです。
- 相手のどんな言動を問題にしているか(性格を問題にすると傷つけます。注目するのは行動です)
- それはなぜ私にとって問題なのか(それをされるとなぜ困るか、嫌なのか)
- 代わりにどうして欲しいのか(これも行動です)
- それをしてもらえると、自分がどんな気持ちになるか(うれしいとか、助かるとか)
整理できたら、これをできるだけストレートに伝えます。
前回書かせていただいたように、私たち日本人は、減点法で育てられることが多いので、マイナス面にばかり注目する癖があります。ですから、上述の4ポイントのうち、1番目のポイント、すなわち相手にして欲しくないことはすぐに意識できるし、それを伝えることもしやすいことでしょう。しかし、それだけ伝えたのでは、「私はあなたのせいで気分が悪い」というメッセージしか相手には伝わりません。当然、相手だっていい気持ちはしません。
大事なのは3番目の「して欲しいこと」です。それをしてもらえると、こちらはうれしい気持ちになります。また、それをしてもらえると、「ありがとう」が言えます。すると、相手だっていい気持ちになるでしょう。こちらも相手もうれしい気持ちになれるのです。
ですから、して欲しくないことばかりでなく、むしろして欲しいことを伝えるようにしましょう。
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