発達障がいとは?

スクールソーシャルワーカーだより スクールソーシャルワーカーだより

2012年9月号

今回は「発達障がいとは何か?」というテーマでお届けします。

お子さん、あるいはご家族、お友だち、同僚に、こんな方はいませんか?

  • 時間通りに行動できない
  • 片付けられない
  • 約束をすぐ破る
  • 忘れ物が多い
  • 空気が読めない
  • 人が傷つくことを平気で言う
  • すぐキレる
  • 落ち着きがない
  • 優先順位をつけるのがヘタ
  • 大事なことを先延ばしにする

多くの場合、私たちは、これはその人の性格に問題があるとか、ちゃんとしつけられていないからだとか思いがちです。そして、「ちゃんとやれ」と叱ったりします。

しかし、こういった人の中には、性格やしつけの問題ではなく発達障がいのためになかなか他の人と同じようにできないという方もいらっしゃいます。どんなに叱られても、自分で「ちゃんとやらなきゃ」と思っても、うまくやれないのです。

発達障がいとは何か

発達障がいとは、遺伝、妊娠・出産時の異常、乳幼児期の病気やけがなどの要因により、脳の一部の発達が阻害されて、本来成長と共に身につくはずの言語、感情や行動の自制、社会性、全身運動、手先の操作、基本的生活習慣などの発達のバランスが崩れてしまうものです。

先に申し上げたように性格の問題ではありませんし、これまた誤解されることがあるのですが、家庭環境や育児の仕方の問題でもありません。

そして、発達のアンバランスの現れ方によって、

  • 社会性に問題が出てくる「広汎性発達障がい」(「自閉症」や「アスペルガー症候群」など)
  • 注意力や集中力に欠けたり、衝動的な行動を取ったりする「注意欠陥・多動性障がい」(ADHD)
  • 知的な遅れが見られる「精神発達遅滞」(知的障がい)
  • 全身運動や手先を使った作業を器用にこなせない「発達性協調運動障がい
  • ある特定の能力(読む、書く、計算、空間認知など)の習得に困難を覚える「学習障がい」(LD)

などに分類されます。一人で複数のタイプの障がいを併せ持っている人もいます。

意外と身近な発達障がい

発達障がいというと、何か特殊で珍しいものように思われるかも知れません。実は、発達障がいは、身近な存在なのです。

ところが、15歳未満のお子さんのうち、発達障がいの一種である、注意欠陥・多動性障がい、または学習障がいであるとされる割合は10%に上ります。また、広汎性発達障がいのお子さんも1.5%程度いると言われています。クラスに2,3人は、発達障がいのお子さんがいる計算ですね。

知能が高いタイプの発達障がい

また、発達障がいの子は知能が遅れているというイメージを持っておられる方もいらっしゃるようです。ところが、実際には知能が高い発達障がいのお子さんもたくさんいます。中には、学年トップの成績を取る子もいます。

このような、ある程度知能が高いタイプの場合、発達障がいであるとは気づかれにくい傾向にあります。そして、特別な支援を受けないまま大人になってしまうケースもたくさんあります。その結果、周りの人たちから性格の問題だと誤解されて非難されたり、自分でも「どうして自分は他の人のようにできないのだろう」と悩んだりしている方がたくさんいます。

バランスが他の人と違うだけ

発達障がいの人は、他の人ができることが十分にできないことがあります。しかし、それは発達のバランスが大多数の人たちと異なるからです。

ですから、特定のジャンルにおいてはすばらしい能力を発揮することもあります。たとえば、

  • 実在の人物をモデルにしている映画「レインマン」に出てきた自閉症の主人公は、ものすごい空間認知力と記憶力を発揮しました。
  • 発明家エジソンは、学校でTPOをわきまえた行動がまったくできずに、退学になりました。
  • 天才物理学者アインシュタインは、自分の家の電話番号を覚えられなかったそうです。
  • 芸術の世界にも、ピカソやモーツァルトなど、発達障がいだったのではないかと言われている天才がたくさんいます。
  • 欧米の俳優の中には、トム・クルーズやキアヌ・リーブスなど、読字障がい(LDの一種)のために台本を読むことが難しいのに、大活躍している人たちがたくさんいます。

発達障がいの本当の問題

発達障がいの問題は、発達のアンバランスそのものではありません。それが周りの人に理解されず、家でも学校でも会社でも地域でも批判ばかりされることで、自信を失ってしまうことです。

その結果、発達障がいの人は元々ストレスに弱いこともあって、不登校、うつ病、アルコール依存症などの不具合を引き起こしたり、たとえそうでなくても、やる気を失って本来持っている素晴しい持ち味を活かすことができなくなったりしてしまいます。いわゆる「二次障がい」と呼ばれる状態です。それだけは避けなければなりません。

エジソンも、アインシュタインも、ピカソも、お母さんたちが「この子は他の子とは違うかも知れないけれど、必ずこの子なりの素晴しい持ち味がある」と信じて、その持ち味を一緒に探し、伸ばしてくれたために、才能を花開かせることができました。

これは発達障がいのお子さん(や大人)に限ったことではありませんが、マイナス面を見て、それを直そうとする関わりだけでなく、プラス面を見つけて(たとえそれがどんなにちっぽけに見えようとも)、それを指摘し、ほめ、励まして、伸ばしていくような関わりをしたいものです。

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