2012年4月号
いくら言っても子どもが言うことを聞いてくれない。そんなときにはモデリングを心がけてみましょう。
あいさつ日本一
4年前、私がSSWとして大玉村の学校に出入りするようになって感心したことの一つは、子どもたちが元気にあいさつをしてくれるということでした。小学生ばかりでなく、中学生までがあいさつをしっかりしてくれるのには驚きさえ覚えました。
先日、企業向けの研修を企画している会社の方に話を聞いたとき、最近の新入社員について企業が困っていることの一つは、「あいさつができない」ことだとおっしゃっていました。それも、仕事に支障が出るくらい、あいさつがまったくできないというのです。
そこで、企業では基本的なあいさつの仕方を研修で徹底的に教え込みます。社会人にそういう研修を授けなければならないというのは、企業にとっては時間とお金の無駄でしかないのですが、やらなければ仕事に支障が出るのですから仕方ありません。ところが、できない人は、教えても教えてもなかなか身につかないといいます。
にもかかわらず、大玉の子どもたちは元気にあいさつができます。なぜでしょう。それは、「あいさつ日本一」の目標を掲げ、あいさつをするように学校で指導しているからでしょう。
しかし、ただ「やりなさい」と指導するだけでは、企業の研修担当者が嘆くように、なかなか身につきません。私は、大玉村の子どもたちがしっかりあいさつできるのは、「モデリング」のおかげだと考えます。
モデリング
モデリングとは、モデルになるということ、すなわち、身につけて欲しい望ましい行動を指導者が行動で見せることです。すると学習する人は、「ああ、こうすればいいんだな」ということが分かります。そして、そうすることが当たり前だと感じ始め、自然にその行動を真似るようになります。さらに、それがその人自身の習い性となり、「やれ」と言われなくてもできるようになります。
大玉村では、「あいさつしなさい」と言う前に、まず先生方の方から子どもたちに(あるいは先生方同士で)元気にあいさつをします。そして、先輩たちも、後輩からあいさつされるのを待つのではなく、元気にあいさつします。すなわち、「あいさつするのが当たり前だ」ということを、先生たちや先輩たちが行動で見せているのです。
すると、新しく入ってきた子どもたちは、あいさつを自然に身につけていきます。こうして、大玉村の子どもたちは元気にあいさつをするようになりました。
モデリング的子育て
あるお父さんが、子育てに関する講演会に行って感銘を受けました。特に、子どもがいけないことをしたときにしっかり叱ることは大切だけれど、子どもの存在価値を否定したり値引きしたりするような言葉(たとえば、バカとかグズとか)を使ってはいけないという話に、納得しきりでした。
そして、家に帰ってみると、上の息子が下の息子に向かって「このバカ!」と罵っていました。それを聞いてカーッと頭に血が上ったお父さん、上の息子の頭をパーンと一発張って、「バカなんて言うな! 弟がひねくれてしまうじゃないか、このバカ!」
もちろん、言葉で「こうしなさい」と教えることは大切です。しかし、残念なことに、子どもたちは大人が何を言っているかよりも、大人が何をしているかの方に影響をされます。反抗期を迎えた子どもたちが大人に反発を覚える一番のポイントは、その大人が子どもに教えていることと、自分がやっていることが違うということです。
う、自分で言っていて、私自身の耳が痛い……。
「朝誰かに会ったら、おはようでしょ!」と口うるさく言うよりも、お父さんとお母さんがお互いに、あるいは子どもたちに対して、元気よく「おはよう!」と毎朝あいさつすることの方がずっと効果的です。
「お友だちには優しくしなさい」と教えるのも大事ですが、親や祖父母が互いに助け合ったり、感謝し合ったりする方が、ずっと効果的です。
もちろん、私たちは聖人君子になんかなれません。しかし、少なくとも努力している姿は見せてやりたいものですね。子どもたちに、どんなモデルを見せていますか?
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