2010年10月号
これから、子ども(子どもだけではありませんが)の困った行動をやめさせ、望ましい行動をとるようにさせるにはどうしたらいいかというお話をしようと思っています。今回はその第1回目です。
ポイントは、「お願い」と「提案」への言い換えです。
「ダメ」の代わりに
子どもの問題行動を叱ったり指導したりする際に、「~しちゃダメ」と言ってしまいがちです。あるいは、そういうダメなことをする子どもを「ダメな奴」と責めてしまったり。すると、子どもはいやな気持ちになりますし、親自身も、ダメ出ししている自分の声に刺激されて、ますますイライラしてしまいがち。
ですから、「ダメ」と禁止する代わりに、「~しようね」と提案してみてください。あるいは「~してちょうだい」とお願いします。してはいけないこと、して欲しくないことを指摘するやり方から、親が子どもにして欲しいことを伝えるやり方に言い換えるのです。たとえば、
「ダメ」という言い方 | 「しようね」 「してちょうだい」という言い方 |
---|---|
弟を叩いちゃダメでしょう! | 何かされていやなときは、「いやだからやめてね」って、口で優しく言おうね。 |
テレビばっかり見て、ダメでしょう! | 帰ったら、テレビを見たりマンガを読んだりする前に、まず宿題を終わらせようね。 |
もう、うるさい! ビービー泣いてちゃ分かんないでしょう! | 泣いたり、どたどた足を鳴らしたりしたら、何が言いたいのか分からないな。落ち着いて口でお話ししてちょうだい。 |
もじもじして、ちゃんとあいさつもできないなんて。お母さん、お前のせいで恥ずかしい思いをしたじゃないの! | おうちにお客さんが来たときには、「おはようございます」「こんにちは」「こんばんは」って、元気にあいさつしようね。 |
手伝いもしないでごろごろして。いったい何様のつもりなの? | 食事の準備を手伝ってくれると助かるなあ。 食器を並べるのを手伝ってくれる? |
具体的に表現しましょう
この方法を使うときには、できるだけ具体的に表現しましょう。具体的にというのは、「行動の形で表現する」ということです。
子どもは親が思っているほど、親の気持ちや考えが分かりません。「これくらい言わなくても分かるでしょう。いちいち私が説明しなくても、あなたがすべきことくらい分かっているでしょう」というのは、通用しないことが多いのです。ですから、誤解の余地がないくらいていねいに、親が子どもに何をして欲しいと思っているのかを説明する必要があります。
たとえば、「お客さんの前ではちゃんとして」でも悪くありません。しかし、親が期待している「ちゃんとした態度」を、お子さんが理解していないことも十分あり得ます(ほとんどそうかも知れません)。そうすると、いくら説教しても、お願いしても、命令しても、親の期待通りに「ちゃんと」することはできません。そこで、上述のように表現してみるわけです。
メリットを伝える
さて、お子さんにそういう行動を取ってもらいたいのはあなたです。お子さんがそういう行動を取ってうれしいのは、あなたです。しかし、そうすることでお子さんにとってもメリットがあるということを伝えてあげれば、お子さんはあなたにお願いされたからというだけでなく、より積極的にあなたの願いを聞いてくれるようになるでしょう。たとえば、
「しようね」 「してちょうだい」という言い方 | メリット |
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何かされていやなときは、「いやだからやめてね」って、口で優しく言おうね。 | そんなふうに人に優しく言えるのはすばらしいよ。きっと、弟だけじゃなくて、お友だちもあなたのことを優しいって思って、あなたにも優しくしてくれるようになるよ。 |
帰ったら、テレビを見たりマンガを読んだりする前に、まず宿題を終わらせようね。 | そうしたら、あとで安心してゆっくり遊べるよ。 |
食事の準備を手伝ってくれると助かるなあ。 食器を並べるのを手伝ってくれる? | そうしたら、早く準備が終わるし、お母さんも疲れないから、あなたと一緒に楽しく食事ができるよ。それに、早く食事が終わったら、あとでたくさん一緒に遊べるしね。 |
いっぺんに会話を変えるのは大変かも知れませんが、できるところから実践してみてください。きっと親子関係が良くなって、お子さんが、あなたの喜ぶ行動をしてくれるようになっていきます。
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