2024年10月号
今回は、嫌な感情をどうやってコントロールするかというお話をします。
「イライラする」「悲しくてたまらない」「不安でいっぱい」「自信がない」など、嫌な感情で悩まされることがしばしばあります。嫌な感情は、ほかの人を攻撃したり、自分を粗末にしたり、やるべきことに手が付けられなかったりと、さまざまな不適切な行動につながります。
出来事が感情を生むのではない
「○○さんがこう言った」「○○さんがこんなことをした」「○○さんがそれをしてくれなかった」。だから私はこんな嫌な気持ちになったんだ。私たちは、普通はそんなふうに考えます。つまり、起こった出来事、状況、他人の言動がこちらの感情を引き起こすということです。
しかし、実はこれは嘘です。というのも、同じ体験をしても、人によって感じ方が変わってくるからです。たとえば、親が中学生の子どもにアドバイスしたら「うるせぇ!」と言われたとします。すると、Aさんは腹を立てますが、Bさんは落ち込み、Cさんは悲しくなり、Dさんは我が子の将来について心配になり、Eさんは恐怖に震えます。
これは、考え方、すなわち起こった出来事についてどう考えるか、どうとらえるか、どう意味づけるか、どう解釈するかが異なるためです。
- 「善意をないがしろにされた」と考えれば腹が立つでしょう。
- 「子どもを怒らせるなんて子育て失敗だ」と考えれば罪責感で落ち込むでしょう。
- 「愛する子どもに嫌われた」と考えれば悲しくなるでしょう。
- 「こんな汚い言葉遣いをしていたら、みんなこの子から離れていくだろう」と考えれば子どもの将来が心配になるでしょう。
- 「殺される」と考えれば怖くなるでしょう。
しかし、「自我が芽生えてきたから、一方的なアドバイスがいやだったんだな。我が子も成長したもんだ」と捉えれば、頼もしい気持ちやうれしい気持ちが湧き上がってくるでしょう。すなわち、感情は考え方が生み出しているのです。
その考えは合理的?
嫌な気持ちになった時は、ちょっと立ち止まって、その感情を生み出した考え方を探ってみましょう。その出来事、状況、他人の言動について、自分の頭の中でどんなことをつぶやいているでしょうか? そして、紙の上に書き出してみましょう(心のつぶやきを書き出すことを「ジャーナリング」と呼びます)。
すると、往々にしてその考え方が合理的ではないことに気づかされます。たとえば、
- 証拠が全くない(あるいは乏しい)のに、勝手に決めつけている。
- そうではないことを示す証拠(反証)を無視している。
- 「AだからBだ」という文章のAがBの理由になっておらず、論理的に飛躍している。
- 拡大解釈をしている。
- 何でもかんでも自分が悪いから(あるいは相手が悪いから)というふうに決めつけている。
- 特殊な出来事を、これからもいつでも起こる一般的な出来事だと捉えている。
- 変えられないものを変えようとしている。
このような非合理的な考え方をしていると、嫌な気持ちになりやすいのです。
新しい考え方
そこで、嫌な感情を生み出している考え方、とらえ方、解釈に気づき、それがどんなふうに合理的ではないかを検討したら、もっと合理的な新しい考え方を生み出します。すなわち、
- 証拠に基づいた考え方
- 論理的に飛躍していない考え方
- 今後良い方向に進んでいくための生産的・建設的な考え方です。
新しい考え方、とらえ方を見つけたら、それを何度も自分自身に言い聞かせましょう。次回は、多くの人が陥りがちな非合理的な考え方の例と、修正の仕方を紹介します。
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