2023年6月号
「物事の受け止め方」を子どもが適切に身につけられたら、子どもたちは今も、そして将来も幸せに暮らしていくことができます。それは起こった出来事の受け止め方次第で、喜びややる気を引き出すこともできるし、その逆の気分になることもあるからです。
事実は一つ、解釈は多様
何かが起こったとき(あるいは起こらなかったとき)、私たちは「事実」と「解釈」を混同しがちです。事実とは起こった出来事そのもの、解釈はそれについて私たちがどう考えたか、解釈したか、意味づけたかということです。これらをまず区別しみましょう。
たとえば、子どもにアドバイスしたとき「うるせぇ!」と言われたとします。これが起こった出来事そのもの、事実です。この事実に対して、人によってさまざまな受け止め方がなされます。
そして、受け止め方によって、それにふさわしい感情が生じてきます。私たちの感情は、起こった出来事から直接引き出されるのではなく、出来事をどう受け止めたかによって決まるのです。
受け止め・解釈・意味づけ | 生じる感情 |
年少者に馬鹿にされた | 怒り |
愛する子どもに嫌われた | 悲しみ |
子どもを傷つけてしまった | 罪責感 |
殺されるかも | 恐れ |
こんな汚い言葉を使うこの子は、ろくな人生を送らない | 心配 |
自分でやりたいのだな。この子も自立してきたなぁ | 喜び、頼もしさ |
おなじみの感情
人間には人によってさまざまな癖がありますが、物事の受け止め方にも癖が出ます。そしてその結果、「おなじみの感情」にも癖が出ます。
- いつもイライラしがちな人は、自分が馬鹿にされたとかわざと損害を与えられたとか受け止めがち。
- いつも落ち込みがちな人は、自分が悪いことをしたと受け止めがち。
- いつも心配しがちな人は、破壊的な未来を想像しがち。
- うれしい気持ちになりがちな人は、喜びのネタ探しをしがち。
ということは、物事の受け止め方を意識して変えてみると、いつもとは違う感情が生じるということです。嫌な気持ちになったときには、少し立ち止まって、次の質問を自分にしてみましょう。
- この気持ちに名前を付けるとしたら何だろう?
- この気持ちが生じたのは、起こった出来事をどんなふうに解釈したせいだろう?
- 解釈抜きにして、起こった出来事は何だったのだろう?
- ハッピーな気持ちになるには、この出来事をどう解釈したらいいだろう?
- その新しい解釈を裏付けるような他の事実(証拠)はないだろうか?
新しい解釈を考えるこつ
新しい解釈を考える際は、次のような点に注意しましょう。
- 具体的な証拠に基づいて判断しているだろうか
- 勝手な決めつけをしていないだろうか
- 百でなければゼロというような極端に走っていないだろうか
- 自分や他人に対して無茶な期待をしていないだろうか
そして、より合理的な解釈を生み出してください。
もちろん、嫌な感情になることがすべて悪いわけではありません。殴られれば誰だって痛いし、大切なペットが死んでしまえば悲しむのが当然です。ただ、そんなふうに考えなくてもよいのに、わざわざ自分を惨めにさせたり、イライラさせたり、絶望させたりしているなら、考え方を変えてみることで楽になってみてはどうだろうか、ということです。
また、上記の自問をする際は、できれば紙に書き出すといいです。書くだけで荒れた気持ちが落ち着いてきます。また、書いたものを読むことで、より客観的に自分の感情や受け止め方を検討することができます。
この「受け止め方に注目して、感じ方を変える」方法は、うつ病の方のリハビリにも応用されているほど効果あるものです。お子さんに試す前に、まずご自分で実践してみてくださ
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