間接命令法

スクールソーシャルワーカーだより スクールソーシャルワーカーだより

2018年10月号

きつい言い方で命令されるのは、叱られているような感じがしますし、奴隷扱いされているような感じもして、あまり気持ちが良いものではありませんね。

それは子どもだって同じです。反発する子もいますし、「お前はダメな子」と言われているように感じて自信をなくしてしまう子もいます。子どもに何かをして欲しいとき、命令されている感じをできるだけ抑える表現方法はないものでしょうか。

というわけで、今回は「間接命令法」というスキルを紹介します。

「○○しなさい」の代わりに

「早くしなさい!」「靴はそろえて!」「宿題やりなさい!」という叱責口調の命令の代わりに、次のような表現を使ってみましょう。

(1) お願い

「靴をそろえてちょうだい」「そろそろ宿題に取りかかってください」など。

もちろん、怖い顔やきつい口調で言うと、やっぱり叱られている感じがしますから、優しい表情や言い方で。これは、このあと紹介する表現でも同じです。

(2) レッツ ホニャララ

「○○しよう」というお誘いの表現です。「お着替えして早く買い物に行こう」「靴をそろえようね」など。

(3) 断定

「靴はそろえてから家に上がります」「食事中はスマホを見ません」など、断定的な言い方をします。

ただし、にらんだり口調を強くしたりしないこと。落ち着いた穏やかな口調で、しかし真顔ではっきりと伝えます。

(4) 指さし

言葉で伝える代わりに指で指すなどして、以前教えておいたことを思い出させます。

たとえば、子どもが靴を脱ぎ散らかしたまま家に上がろうとしたら、名前を呼ぶ。肩をちょんちょんとつついたりしてこちらに注目させてから、おもむろに散らかっている靴を指さす、など。

その場合も、やはりにらんだりしないで、微笑んだりちょっとおどけたような表情をしたりするといいです。「あなたはいい子。うっかり忘れちゃっただけだから、思い出したらできるよね?」という無言のメッセージを伝えるためです。

人には、他人の期待に応えたいと思う性質があります。「あなたはダメな子」というメッセージを伝えてしまうと、その「期待」に応えて、ますますダメな子にふさわしい行動が強くなります。

(5) 質問

「宿題はどうしたかなぁ?」「食事のときにはどうするんだったっけ?」などのように、質問することによって、どうすべきだったかを思い出させます。

(6) 未完成の表現

私が中学生の頃、下校時の買い食いが問題になりました。生徒指導の先生が、生徒たちを集めてこうおっしゃいました。「帰りに買い食いはしまぁ?」 それで沈黙するものですから、気持ちが悪くなった私たちは「せん!」

このように、中途半端なところで文章を切られると、人はそれを補いたくなります。

これと同様に、家に上がる前に「靴は?」と問いかけ、子どもから「そろえる」という言葉を引き出すことで、望ましい行動に気づかせます。

(6) 制裁予告

約束した行動をとれなかったとき、そのままだと何らかの制裁が与えられるということを語って、望ましい行動を取らなければと思わせます。

ただし、強い口調で「そんなことしていると、罰としてこうだからね!」などと脅してしまうと反発を招きますから、聞こえる程度の音量でぼそっと独り言のような感じでつぶやくのがコツです。「オモチャを出しっぱなしで片付けない人は、おやつをもらえないけど、いいのかなぁ……」というふうに。

アフターフォローも忘れずに

もちろん、これらの関わりによって、あるいは自発的に望ましい行動を取ってくれたときには、「できたね」「すごーい!」「約束を守ってくれてうれしいな」などと、承認の言葉かけをしましょう。

そうでないと、今回紹介したような方法を使っても、子どもは動いてくれなくなります。

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