勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし

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勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし。

プロ野球の名将・野村克也さんの座右の銘として知られており、元々は江戸時代の平戸藩主、松浦静山の言葉とされています。「偶然に勝つことはあっても、負けるときには必ず理由がある」という教えが込められています。子どもの成長や教育の現場でも、この考え方は多くのヒントを与えてくれるでしょう。

勝ったときと負けたときの対応

成功を共に喜び、成功した理由を一緒に探る

子どもがテストで良い点を取った、部活動で優勝した、コンクールで入賞した…そんなとき、大人はつい「すごいね!」「よくがんばったね!」とほめたくなります。

しかし、「勝ちに不思議の勝ちあり」という言葉の通り、勝利の裏には偶然や運の要素もあります。たまたま出題範囲が得意分野だった、一夜漬けのヤマが当たった、相手チームの調子が悪かった…そんなこともあるでしょう。

かといって、「今回はたまたまだ」「ここで慢心したら次は失敗するぞ」などと否定的な反応をするのはNGです。子どもがやる気を失ってしまうからです。良い結果に対しては、「よくやったね」としっかり認めましょう。

さらに大切なのは、「どうしてうまくいったのか?」を一緒に振り返ることです。「どんな工夫をしたの?」「前と違う点はどこだった?」と問いかけることで、子ども自身が「再現できる成功の理由」を見つけていけます。一時的な勝ちを「次につながる学び」に変えられるかは、支える大人次第です。

失敗の悲しみを共感し、失敗の理由を一緒に探る

一方で、子どもが失敗したり、思うような結果を出せなかったりするとどうでしょう。親も教師もつい「もっとがんばればよかったのに」「やる気が足りないからだ」と叱りたくなるのではないでしょうか。

しかし、その子なりに努力したのに結果を出せないこともあります。その場合、子どもは「努力しても無駄だ」と思い、やる気を失ってしまうかもしれません。

確かに「負けに不思議の負けなし」ですが、負けた理由は子どもの努力が足りなかったからだけではありません。たとえば「効果的な勉強法を知らなかった」「緊張で力を出せなかった」「相手が強かった」など、さまざまな原因が考えられます。

このとき大人がすべきなのは、うまくいかなくて悔しい気持ちや悲しい気持ちを共感することです。その上で、「なぜ負けたのか」を一緒に整理してあげましょう。

具体的には、以下のように質問をします。

  1. 穏やかに「どうしてがんばったのに思ったような結果が出なかったと思う?」
  2. 続けて「次に同じ状況になったら、どうしたらいいと思う?」

尋ねられた子どもは、失敗を分析する力を身につけます。負けるたびに強くなる子に育っていくのです。

勝ち負けよりも、「学びの筋力」を育てる

私がスクールソーシャルワーカーとしてさまざまな親子に関わってきた中で感じる原則があります。結果に一喜一憂せず、子どもの「学びの筋力」を育てる大切さです。どんな結果も受け止めて、次に生かす力のことです。

子どもに「勝ち負けの理由を振り返る習慣」がつくと、次のような力がつきます。

  • 偶然の成功に傲慢になって努力を忘れたりせず、必然の成長を手する力
  • たとえ負けても多くのことを学ぶ力

大人もまた、学びの途中

子どもの成長を見守る私たち大人も、実は同じです。子育てや指導がうまくいったときは、その裏に「偶然の勝ち」があるかもしれません。逆に、思い通りにいかない日々には、きっと「何かの理由」があります。そして、負けの理由は明日の成功の種です。

「今日の声かけはどうだったかな」。
「どうして今日は、子どもと穏やかに過ごせたのだろう」。
「あの言葉で子どもが元気をなくしたのはなぜだろう」。

勝っても負けても自分を振り返る姿勢を持つ大人は、子どもにとって最高のモデルになります。

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